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駅弁の挑戦① 「冷凍駅弁」の取り組み

新型コロナウイルスの影響で、鉄道旅行そのものがどうなるかわからなくなってしまった現在、鉄道旅のお供である「駅弁」の見通しは決して明るいものではありません。

しかし「駅弁」は、このまま廃れてしまうのでしょうか?
これから複数回にわたり、コロナ以前から駅弁業界で行われている“挑戦”を紹介しつつ、駅弁の未来について考えていきたいと思います。

「冷凍駅弁」のはじまり

最近では、スーパーやコンビニ店頭で当たり前に販売されている冷凍の惣菜やお弁当。
実は今から20年も前に冷凍駅弁が発売されていたことをご存知でしょうか。

2001年、日本食堂の流れを組む、株式会社日本レストランエンタープライズ(現・株式会社JR東日本クロスステーション)が、発売したオーガニック弁当シリーズ「O-bento(オーベントウ)」は、駅弁業界のみならず、食品業界全体としても画期的な取り組みとして注目を集めました。

「O-bento」シリーズ開発のきっかけは、もともと高かった駅弁のロス率低減と、駅チカにも進出してきた低価格コンビニ弁当への対抗でした。

発売当初のラインナップは、「牛すき焼き風弁当」など6種類。
各々大小サイズがあり、オーガニックを売りにしながら大は600円、小は330円という手頃な価格もあり、オーガニック食品ブームとの相乗効果で売り切れが続出するほどの人気を博しました。

オーガニックで低価格駅弁の秘密

この「オーガニックで低価格」を実現した秘密が
「冷凍」「輸入」の2つ。

「O-bento」シリーズは、アメリカの工場で製造したものを弁当ごと冷凍し輸入。店頭まで輸送し、店で解凍して販売するという画期的なシステムを採用していました。

有機米、無農薬野菜、ナチュラルビーフなど、使用する食材はアメリカ産。
よく自国の一次産業を守るため、農畜産品には高い関税がかかるということを耳にしますが、実は加工食品になると関税がかなりお安め。
そのため、完成した冷凍弁当をそのまま輸入することで、オーガニックで低価格が可能になりました。

絶好調の先に起きた不幸な出来事

そして発売から2年後、2003年にはシリーズ200万食を超える大ヒット商品になったのですが……。
その年、アメリカでBSE 問題が発生。

あの「牛丼騒動」といえば記憶に新しいでしょうか。

アメリカ産牛肉および牛加工品は全面的に禁輸措置が取られ、「O-bento」の売れ筋だった牛肉系の駅弁は全面的に発売休止に。
また他のラインナップも、元々「ごはんがあまりおいしくない」という弱点を克服できず、2007年にはシリーズ自体が終売となってしまいました。
まるで、昨今の新型コロナウイルス禍を彷彿とさせる事象です。

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その後も駅弁製造各社では、冷凍駅弁開発に取り組んでいます。
昨年、コロナ禍で甚大な影響を受けた崎陽軒では「冷凍チャーハン弁当」をはじめ、複数商品を発売しました。
ただ、「おいしい冷凍ごはん(白飯)」の開発は難しいようで、あの「シウマイ弁当」も冷凍品の発売には至っていません。
逆に冷凍の「おいしいごはん」さえあれば、駅弁の新たな未来も一つ拓けてくるはず。
ぜひ期待したいですね。

この記事を書いてくれた人:江戸川渓谷(えどがわけいこく)
プロフィール:三度の飯とおにぎりが好き。趣味は道の駅めぐりに商店街散策、メタボ対策のトレッキング。うまいものは足で稼ぐのが信条。ゲットした惣菜で晩酌するのが最近の楽しみ。

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