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[誰がブランドを決めるのか?]ミルキークイーン編

「ミルキークイーン」は特定の自治体が開発し、推すことにより全国区になったお米……ではありません。
特定のプロモーションを経て有名になったのではなく、その「尖った特徴」が消費者や米屋などに評価され、じわじわとその名前が知られるようになったのです。

今では茨城県、長野県、山形県、滋賀県等々日本各地で広く栽培されているお米です。

「スーパーライス計画」とは

「ミルキークイーン」は普通のお米とは見た目が違います。粒は若干細長く、小さ目です。そして色が濁った白色をしているのです。
名前はその色から由来しており「乳白色に見える『良質米の女王』」という意味を込めて名付けられました。
そしてその「尖った特徴」ですが……「非常に粘りがあり、軟らかい」という点につきます。

「ミルキークイーン」は1985年に農業研究センター(現在の農業研究機構)で開発が始まりました。農林水産省が立ち上げた「スーパーライス計画」の一環です。

ちなみに「スーパーライス計画」とは、平成元年から平成6年まで行われた計画で、病気に強いお米・栽培しやすいお米・ちょっと変わったお米(新形質米)など、新しい品種開発が展開されていました。

お米の胚乳の多くを占めるでんぷんは、「アミロース」と「アミロペクチン」の二つに分かれます。

「アミロペクチン」が100%のお米が「もち米」です。

対して普段私たちが食べている「うるち米」は「アミロペクチン」に加えて「アミロース」も含まれています。

この「アミロース」が、例えば「コシヒカリ」であれば22%前後含まれているのですが、「ミルキークイーン」は9.5~11.1%程度なのです。
そのため通常の「うるち米」よりも「もち米」に近く、粘りがあり軟らかいのです。

炊飯時は水を少なめに

業界ではこういったお米を「低アミロース米」と呼びます。
代表的なブランド米では北海道の「ゆめぴりか」や宮城県の「だて正夢」がそれに含まれます。

「ミルキークイーン」はその特徴を生かした食べ方があります。
まず軟らかくなりやすいため、炊飯時の加水量を10~15%ほど減らす必要があります。

その軟らかさは「冷めても硬くなりにくい」につながり、お弁当向きです。また玄米でもその軟らかさは特徴として生きているため、初めて玄米食にチャレンジする人にはミルキークイーン玄米がお勧めです。

逆に寿司やおにぎりには向いていませんが、それでもおにぎりであれば「あまりほどけないおにぎりが好き」な人には向いていますし、寿司屋でも「シャリに甘みを出したいときに」ブレンドして使ったりします。

もっちり系の代表格

デビュー当時は、米屋の間では「安いお米でもこのミルキークイーンをブレンドすれば美味しくなる」ということで、ブレンド用のお米として使われていた時期もありました。
もちろん今では一般の消費者の間で「もっちり系の代表格」として有名であり、特に女性やお子さんに人気なお米です。

ただ炊飯時の加水量を減らすことへの理解不足や、最近は「もっちり」よりも「やや硬めで歯ごたえがある」お米が人気ということもあり、以前ほどの人気は見られません。

それでも上記に示したような、その特徴を生かした食べ方をすれば、これ以上「尖ったお米」はありませんので、今後も根強く残っていくことでしょう。

今では「ミルキーシリーズ」として「ミルキープリンス」「ミルキーサマー」「ミルキースター」など多くの品種が派生して生まれています。

かの有名なグルメ漫画「美味しんぼ」。
お米について取り上げられることは多いのですが、具体的な品種の名前になると「コシヒカリ」「ササニシキ」「あきたこまち」そして「ミルキークイーン」しか出てきません。
ここからも、歴史の浅い「ミルキークイーン」であっても、その味のインパクトは「コシヒカリ」等に負けず劣らずの破壊力があったことをうかがい知ることができますね。

この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)


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