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お米で作らない「おもち」。群馬県の郷土料理「焼きもち」

おもちといえば、蒸したもち米を臼でついて、丸や四角い形にまとめたもの。それを焼いたのが、焼きもちですよね? でも群馬県では、小麦粉を丸めて焼いたものを「焼きもち」と呼んでいるのだとか……。

今回は群馬県の郷土料理である、お米を使っていない「焼きもち」をご紹介します。

小麦粉に季節の野菜を刻んで混ぜたのが「焼きもち」

群馬県は豊かな利根川の水脈や標高差を生かして、ほうれんそうやキャベツなど様々な野菜が作られています。県の平野部では、お米の収穫を終えた後に小麦を栽培する二毛作も、古くから行われてきました。そのため、小麦粉を使ったおもち・うどん・まんじゅうなどが親しまれているようです。

「焼きもち」もその1つで、小麦が多く生産されている群馬県伝統のおやつです。小麦粉にみそや切り刻んだ野菜などを混ぜて、平らに丸めて焼きます。野菜は、ねぎ・しそやふきのとうなど、畑でとれた旬のものを入れます。手早く作れて、日持ちと腹持ちがいいのが魅力。もともとは農作業の合間に食べる軽食のような位置づけでした。

「あんびん」「ちゃなこ」「はりこし」名前の数だけ「焼きもち」がある

さて、群馬県のお隣りの長野県の名産といえば「おやき」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「焼きもち」と「おやき」、名前も見た目も似ていますよね。

焼きもち:生地に味噌と野菜を練り込んだタイプ
おやき:具材を生地で包むタイプ

2つにはこんな違いがあるようです。
さらにエリアや家庭によって、呼び名も少しずつ異なります。「あんびん」「ちゃなこ」「はりこし」などとも呼ぶ地方もあるそうですよ。

今でもおやつとして食べられていますが、意外な食べ方としておすすめされているのが、鍋物の〆めに投入すること!
特にキムチ鍋や鶏鍋と相性がいいのだとか。何とも懐の深い「焼きもち」。
名前の数だけ、ささやかなドラマがあるのかもしれません。

カリッともっちりがお気に入り「焼きもち」

「焼きもち」は、ほぼ家にある材料で作ることができます。
しょっぱいパージョンと甘いパージョンを試してみたくて、3種類の具材を用意。さて、いったいどんなもの? ウキウキわくわくしながら作ってみました。

【 材料 】4人分
・小麦粉 200g
・片栗粉 小さじ1杯
・重曹  6g
・味噌  20g
・水   100mL + ぬるま湯大さじ1杯程度(味噌を溶かす)
(具材)
・蒸したかぼちゃ  適量
・なすみそ     適量
・切り刻んだ野沢菜 適量

【 作り方 】
(1)小麦粉、片栗粉、重曹を計量して、ふるっておきます。
(2)味噌をぬるま湯で溶いておきます。
(3)(1)に水と(2)を入れて、さっくりと混ぜて生地を作ります。

(4)生地を3等分して、それぞれに具材を加えます。
(5)一口大程度に丸めておきます。

(6)フライパンに油をひいて、片面ずつ弱火で焼きます。

\ 作り方のポイント /
丸めて成形するのが楽しい!
中心部が生焼けにならないように、フライパンに蓋をして、ゆっくり火を通します。
表面はカリカリ、中はもっちりした食感が美味しい「焼きもち」が出来上がりました。生地に味噌を練りこんだせいか、ほんのりとした塩気を感じます。調味料を控えめにしているため、野沢菜の焼きもちはしょっぱめで、かぼちゃの焼きもちは自然の甘さが際立ちます。ついあれもこれもと欲張りたくなりますが、見た目よりもボリュームがあるため、2個食べればお腹が十分に膨れました。ちょっとお腹がすいたときに気軽につまめる、簡単でありながら、しみじみとおいしい「焼きもち」。
世の中には、まだまだ知らないおいしい食べ物が存在するのですね。

「焼きもち」は小麦粉で丸く焼き上げる以外に決まりはないようです。
初めに蒸してから焼いたり、小麦粉ではなく米粉やもち粉を使う場合もあるのだとか。今回は甘辛味を作りましたが、七味を入れたピリ辛バージョンも気になります。

焼きもちや焼きまんじゅうに代表される粉食文化を誇る群馬県。
地域で受け継がれてきた気取りのない味を、ぜひご家庭でお試しください。

この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。

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