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[誰がブランドを決めるのか?]ササニシキ編

「知っているお米の名前を挙げてみてください」。
私はよくイベントでこのように問います。
多くのお客さんはせいぜい3~4品種で止まるのですが、ササニシキは必ず含まれます。

しかし、実はササニシキの生産量は今やガタ落ち……というのはご存知でしょうか?

人々の心に残るササニシキ

生産量が一位の品種はコシヒカリ。全体の約30%を占めています。一方でササニシキは……何と衝撃の0.4%! です。

しかし……生産量が少ないにもかかわらず、なぜササニシキは大勢の人々の心に残っているのでしょうか?

それは次のような歴史があるからです。

ササニシキは1953年、宮城県の古川試験場でハツニシキとササシグレの間で生まれた品種です(ハツニシキはコシヒカリの兄弟)。
当時、宮城県で広く栽培されていたササシグレよりも収量が多くとれ、病気にも強かったことから、生産者が好んで栽培するようになり、徐々に収穫量が増えていきました。
また、当時のお米と比べると味が良かったことも収量が増えた要因の一つです。「味が良い」ことが増産につながったのは、コシヒカリと同じく「自主流通米制度」があったからです。

1960年代に入り「コメ余り」の時代になると、政府が管理するだけではなく一定の条件のもと自由にお米を流通させてもよいことになりました。

その制度のもと、ササニシキは「美味しいお米」と各地で認識され、また生産者は自分の作るお米が高く売れるため、東北から関西まで広い範囲で栽培されるようになったのです。

コメ余りの状態はお米の評価を「量よりも質」へ転換させました。そのなかでコシヒカリとササニシキは群を抜いて美味しかったため、両横綱としての地位を確立していきました。そして1985年~1990年には、コシヒカリに次ぐ生産量第二位まで躍進したのです。

このような歴史があるため、ササニシキは今でもたくさんの人々の中で「美味しい良いお米」と印象に残っているのでしょう。

リスキーなお米?

ではなぜ現在はここまで収量が落ち込んでいるのでしょうか。
それは1993年の大冷害が原因です。

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全国的な米の生産状況を表す「作況指数」。
100だと例年並み、105を超えると大豊作、90台だと凶作と判断されますが、この年はなんと74。

特に東北地方の太平洋側が軒並みひどく、ササニシキが主流の宮城県は37と未曾有の被害を受けました。ササニシキはこの年の冷夏に耐えられなかったのです。

お米の収穫は1年に1回のみ。1回でも収穫できなければ、その年の生産者の収入は激減です。
以後、ササニシキは作り手から「リスキーなお米」と認識され、ちょうど2年前に開発された冷害に強いひとめぼれをササニシキに代えて栽培するようになったのです。

ブランド米として存続している理由

そして現在。
ササニシキの生産量は低迷したままですが、味についてはどうなのでしょうか?

寿司屋からはいまだに根強い支持を受けています。さっぱりした味が魚介類の薄味とよく合います。粘りも少ないのでシャリ切りがしやすく、シャリが口の中で適度にほぐれます。

一般のお客さんでは「最近の品種のように味が濃いお米は苦手」と言ってササニシキを好む方がいます。
ササニシキはコシヒカリ系と比べると「お米アレルギー」が起こりにくいこともあり、健康に気を遣っている人ほどササニシキを、しかも玄米や分搗き米を食べています。

弊社の商品のなかに有機栽培のササニシキがあります。農薬や化学肥料を使用していないため通常の半分程度の収量です。そのため高値になっていますが、それでも翌年の春頃には売り切れてしまう人気商品です。

産地もこういった消費サイドの動きを感じ取り、JAみやぎ登米では「ササニシキ復活プロジェクト」を推進しています。

ササニシキは、今ほど品種が多くなかった時代だからこそ「美味しいお米」として評価された面もありました。
しかし上記のように、現在の「お米戦国時代」であっても根強い人気があるのです。このことはササニシキの実力が今でも通用することの証であり、長きにわたりブランド米として存続している理由でもあるわけです。


この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)


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食から始まる豊かな生活を再発見するメディア「Discover LIFE」です。 日本人の主食である「お米」の歴史や食文化・食べて痩せるダイエットなど、知っているようで意外と知らないトリビアから暮らしに役立つ情報まで、さまざまな視点でご紹介します。

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