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収益向上狙い稲作特化 故郷の美しい自然環境守る

京丹後市久美浜町竹藤地区は京都府北西部に位置し、古来大陸からの往来で栄えた日本海からも近く、美しい自然環境とともに弥生時代からの遺跡があり、氏神様は由緒ある貴船神社という、歴史のある里です。

現在は20軒ほどの小さな集落で、ほぼ全戸が農業を生業としています。他のエリア同様高齢化が進んでおり、美しい自然環境を守るためには、まず農業守らなくてはと平成25年、40~50代の生産者5人が立ち上がり、農事組合法人アグリ竹藤を設立しました。代表理事組合長の森本賢一郎さんに話を聞きました。

今では集落の全農地の約8割を預かって、耕作しています。昨今の農業は機械などのコストがかさみ、農業で生計を立てるためには、農地集積が不可欠なのです。

生産者が農業で食べていけるようにと昨年、畑作をやめて稲作のみの農業に切り替えました。近年、コメ離れが加速化しているだけに、時代に逆行しているようですが、春の田植えや水管理、秋の稲刈りや収穫が、作業の大半を占めるコメに対し、野菜は圧倒的に手が掛かります。農繁期には人を雇う必要もあり、そのぶんコストがかさみます。

竹藤地区はコメ作りに適した地域

そもそも竹藤地区には、ミネラル分を多く含んだ土と澄んだ湧き水に恵まれたコメ作りに適した地域で、昭和3年、「大嘗祭」に京都を代表して献穀田に選ばれ、新米を献上した良質米産地です。こうした地域の宝を生かしたいという想いもあります。

ただ問題は、コメの値段が年々下がっていることです。それなら、こだわりのコメを作ろうと、慣行栽培より農薬や化学肥料の使用量を50%以下削減した特別栽培米にチャレンジしました。その分丁寧な管理が必要ですが、結果的に安全や美味しさにつながり、販売先から厚い信頼を得ることができました。

一方、中山間地域の竹藤では、美しい景観とコメ作りを支えてきた棚田が、財産でもあります。これを守るのに、都会に住む人の力も借りようと平成29年、「棚田オーナー制」をスタートしました。
1㌃単位でオーナーを募集し、農作業は当社が担う一方、田植えや稲刈り、収穫などのイベントに家族で参加できるシステムです。収穫したコメはすべて、精米後オーナーにお届けする。イベントの際の、地元産食材を使った手作りのおにぎり弁当も好評で、オーナーは2019年、30人を超えました。目標は100人ですが、残念ながらコロナ禍の2020年は、活動休止を余儀なくされています。

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地元産米を使った加工品

生産するコメはコシヒカリと加工用米、酒造好適米の3種類で、コシヒカリは主食用として販売するほか、京土産を代表する和菓子メーカーから生八つ橋原料としても採用されています。加工用米は西京味噌用、酒造好適米では「祝」を生産し、JAを通じて酒造メーカーに販売してもらっています。

一方、コメ以外の地元食材の活用として、農家女性が中心となって、ご飯の友の生産にも取組んでおり、摘果梨を使った奈良漬けが自慢です。ほか、黒豆の煮物や山椒の佃煮、地元産米を使った米粉パンなどを生産する加工場を目下、建設しています。

▼ 竹藤の米(コシヒカリ)の米粉からつくったあんパンと総菜パン

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▼ 現在作っているかす漬けの壺(摘果メロン・キュウリ・ウリなど)

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この記事を書いてくれた人:ちとせあめ
食品専門紙記者。子育てをしながらフリーランスで、マーケティングリサーチの調査員や行政の消費生活相談員、ライターの経歴も持つ。趣味はお菓子作りで、米粉を使ったグルテンフリースイーツに夢中。