見出し画像

自宅でブレンド米を楽しむ方法

お米の「味」を楽しむ方法の一つに
「ブレンド米をつくる」があります。

「ブレンド」とは「違う品種を混ぜることにより今までにない新しい味を作り出す」ことです。

しかし一般の人であれば
「そもそも品種ごとの味の違いがよく判らないのに、ブレンドしたらもっと訳が分からなくなるのでは?」
と思われるでしょう。

ここで「ブレンド米」の歴史について少し触れてみましょう。

私たちプロが仕立てる「ブレンド米」は、もともとは「そこそこ美味しいお米を安定して国民に供給する」手法でした。
以前は今のように美味しいお米ばかりではありませんでした。
そこで米屋はその時々のお米の仕入れ状況を鑑みて「ブレンド米」を仕立て、お客さまがそこそこ満足できるような味のお米を提供していたのです。

今はコシヒカリに代表されるような美味しいお米が年間を通じて安定して手に入るため、ブレンドは昔ほどその必要性は薄れてきています。

しかし一方で今ほどお米の品種が豊富な時代もありません。
そして品種の数だけお米の味は違います。

最近ではその多様性に気付いた飲食店が「料理の材料としてのお米」にフォーカスするようになり「こだわりのブランド米」を選ぶ……では飽き足らず、ブレンドをすることにより自分のお店独自のお米を生み出しているのです。

つまり「ブレンド米を作る」ことは実はプロの領域に足を踏み入れることになるのです。

ブレンドの法則

一般的にブレンドするときの法則は以下の通りです。

①ブレンドの方向性

おかずや調理法がターゲットか、若しくはごはんの状態がターゲットか?

「おかずや調理法がターゲットの場合」
焼肉に合うお米、おにぎりに合うお米など。
※この場合、「口内調味(お米とおかずが口中で混じりあって違う味に昇華すること)」をイメージしてください。

「ごはんの状態がターゲットの場合」
いつも食べているごはんよりも甘みが強いごはんを。
いつも食べているごはんよりもさっぱりしているごはんを。

②ブレンドの「コツ」 

ヒントその1:ブレンド材料は2~3種類で。
ヒントその2:割合は等分にはしない。
ヒントその3:相反するお米をブレンドする。

上記のような考えはありますが、これだけではなかなかイメージしづらいと思います。

そこで次の章では、具体的な品種を用いたブレンド例を挙げてみましょう。

ブレンドの割合

パターン①:カレーに合うお米

ルーがよくなじむように粒が一粒一粒立っていること。またルーの濃い味と交わっても存在感のある旨味があるお米が良い。
→ 北海道産ななつぼし3:コシヒカリ(出来れば福島か北陸産)1

パターン②:丼もの

具材の汁を受けても形が崩れないこと。そして具材を咀嚼している間にも口中にしっかり残っているお米が良い。
→ 秋田県産あきたこまち2:宮城県産ひとめぼれ1

パターン③:炊き込みごはん

出汁が染み込んだ粒が主役なので、粒単体でしっかり味があること。
具材の味に負けないように濃い目の味があるお米が良い。
→ 山形県産つや姫3:北海道産ゆめぴりか2

上記内容はあくまでも事例です。
ブレンドには厳格なルールはありませんので、皆さんのやり方で大丈夫です。
例えばお米を買う度に違うお米を選び、次のお米を買う前に少し余らせて、その余ったお米と新しく買ったお米をブレンドする、というのが無理のない楽しみ方でしょう。もしかしたら自分でも想像できないくらい美味しいお米に出会えるかもしれません。

「『ブレンド』は目的ではなく手段です」。
私はプロの料理人の方にそのように話をしています。
皆さんが普段の生活でブレンドを行う目的は、「お米を楽しむこと」に尽きます。
ブレンドを通じてお米の新しい可能性、違う一面を見つけていただければ、米屋としてこれ以上のことはありません。

この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)