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米に親しみ、米を語る。「お米マイスター」はこんな資格。

「お米マイスター」。
ときどきメディアで耳にすることがあると思います。

実は、お米関連の資格はいろいろあります。
「ごはんソムリエ」「米・食味鑑定士」「お米アドバイザー」「東京米スター」……などなど。
それぞれの資格を承認する団体は異なっており、「お米マイスター」は米屋の全国組織である「日本米穀商連合会」が認定している資格です。

上記の資格は、いずれも米業界に携わっている人にとって魅力的なものばかりですが、中でも「お米マイスター」はメディア露出が高いということもあり、その知名度は頭一つ抜けています。
資格取得者数は「三ツ星お米マイスター」2260名、「五ツ星お米マイスター」442名、となっています(令和2年5月31日現在)。

この資格ができた背景には「食糧管理制度の廃止」が影響しています。
時は2002年。
1990年代後半の制度改革によりそれまで規制産業だった米業界が、一気に自由競争となりました。その中で消費者が「間違いのない米屋選び」をするための基準として生まれました。

お米マイスター「三ツ星」と「五ツ星」の違い

私がよく質問を受けるのは
「三ツ星」と「五ツ星」は何が違うのか?
です。

「三ツ星」は知識試験に合格した者で、「五ツ星」は技能試験に合格した者です。
マイスターのホームページには以下のように試験科目が記載されています。

三ツ星お米マイスター認定試験(知識試験のため筆記試験)
(1)米の品種特性・来歴
(2)精米技術
(3)米の保存と保管技術
(4)炊飯特性と炊き上がりチェック、ブレンド特性
(5)接客マナーと対話法
(6)米の栄養学・ごはん食の効用
(7)関係法令

五ツ星お米マイスター認定試験(技能試験のため試験官との個別面談試験)
(1)精米技術(お米を精米する技能。精米機械の知識) 
(2)玄米鑑定(玄米としての米を見極める能力)
(3)米穀商品説明(三ツ星で学んだこと等を消費者に説明する能力)
(4)炊飯技術(ご飯を炊く能力) 
(5)食味官能評価(ご飯としての米を見極める能力)
(6)米穀ブレンド技術(ブレンドする能力)
(7)炊飯指導技術(飲食店主等に炊飯を指導する能力)

上記にあるように、三ツ星は記述試験です。
事前に与えられたテキストを読み込み、さらに試験当日の午前中の授業を受けたのちに試験を受けます。

いっぽうで五ツ星の試験は……かなり難しいです。
使用しているテキストは三ツ星と同じですが、ここに「実践」が入ります。

まず、受験者は自分でブレンドして精米したお米を連合会に送ります。そこで精米技術及び白米の味について採点されるのです。
さらに、精米されたお米が事前に受験者のもとへ送られてきます。受験者はそれを実際に食べた上で、その白米の課題点とその解決策をレポートにまとめるのです。

お米マイスターとは

試験当日は専門家と対面の口述試験です。
ここで「専門家」と言われて「おや?」と思いませんか?
米屋ももちろん「専門家」ですが、米屋の知識は一般的に「広く浅く」です。それぞれの分野には米屋よりももっと深く探求している専門家がいるのです。
その分野が上記の(1)・(2)・(4)・(5)・(7)なのです。(5)については、その場で実際に食べて評価します。

米屋はマイスターの試験を通じて、今まで経験則で知っていたことを、体系的に、エビデンスを伴った知識として身に付けることができ、より実践的な知識に昇華することができる……。
私はお米マイスターの資格をそのように捉えています。

もちろん課題もあります。
「同じマイスターでも差がある」ということです。お米マイスターに限らず「資格」を取っただけでは仕事につながりません。資格試験で得た知識を活用し、ノウハウまで身に付けた人こそ、より良い仕事ができるのです。

お米マイスターの課題

資格制度が出来て20年経ちますが、同じ五ツ星でもレベルが分かれてきています。そしてその先のレベルを測るモノサシ=資格がないのです。

また専門分野ごとに知識の偏りが生じています。
例えば精米技術は米屋にとって毎日のことなので日に日に腕は上がりますが、「栄養学」については試験の時にさわりを知っただけで、その後で例えば食育の授業等で話す機会が無ければそのままです。実践で知識を貯めていない分野については、知識のアップデートが不可欠です。

ただこういった課題がありつつも、やはり米について幅広い知識を有しているのは米屋以外、見当たりません。
私は先日テレビ取材を受けましたが、先方が期待しているのは「米に関してワンストップで話せる人」なのです。そしてそれを実現できるのがお米マイスターと言えるでしょう。

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この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)