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三角なのになぜ転がる? 「おむすびころりん」の謎

日本のおとぎ話の一つ「おむすびころりん」。
山で木の枝を切っていたおじいさんが、昼食にしようと切り株に腰掛け、おばあさんの握ったおむすびの包みを開いた。すると、おむすびがおじいさんの手から滑り落ち、コロコロと山の斜面を転がり落ちていく。
おじいさんが追いかけると、おむすびが木の根元に空いた穴に落ちてしまった。おじいさんが穴のなかを見ると、何やら声が聞こえてくる。
おじいさんが他にも何か落としてみようか辺りを見渡していると、誤って穴に落ちてしまう。
穴の中にはたくさんの白ねずみがいて、おむすびのお礼にと、大きいつづらと小さいつづらを差し出し、おじいさんは小さいつづらを選んで家に持ち帰った。家で持ち帰ったつづらを開けてみると、たくさんの財宝が出てきました・・・

さて、ここで大きな疑問が湧いてきます。

みなさんがパッと思い浮かべる「三角形のおむすび」を、ホールインワンさせるのはとっても大変なことです。そもそも「おむすび」は、なぜコロコロと斜面を転がったのでしょうか?

答えはとってもカンタン。
実はこの「おむすび」は、“まんまる”だったのです!

「まんまるのおむすび」であれば、コロコロと転がって、スッと穴に落っこちるのも合点がいきます。

“おにぎり4大形状”群雄割拠の時代

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みなさん、思い出しましたでしょうか?
実はつい最近、昭和の終わり頃まで、日本中のおにぎり(おむすび)の大半は三角形ではなく、“まんまるの球状”が主流でした(「おむすび」と「おにぎり」の呼び名の違いについては、別の機会にお話しします。今回は以下「おにぎり」で統一します)。

「お母さんがにぎったおにぎりはまんまるだった」
「いや、うちは俵形だった」
「円盤型の焼きおにぎりをよく食べた」
「昔から三角だったよ」

などなど。

少なくとも江戸時代後期から昭和40年代まで、おにぎりの形状は長らく「まんまる」「俵」「円盤」「三角」の“4大形状群雄割拠”の時代でした。

とりわけ全国に広く分布していたのが「まんまるおにぎり」で、最盛期で全体の9割以上を占めていたと推測されます。
これは日本人の大半が農民だった時代、農作業の合間に、まんまるのおにぎりを食べていたことに由来します。このおにぎりは「かて飯」と呼ばれ、大変貴重な白米をカサ増しするため、野菜くずを混ぜてにぎって食べていたそうです。
「かて飯」は先人の知恵が産んだ、ごはんと野菜を同時に取れる元祖バランス栄養食なのです。

今でも関西を中心に愛されている「俵おにぎり」が誕生したのは江戸時代後期。元禄文化が花咲く上方で、町人の間で大流行した歌舞伎がきっかけ。歌舞伎の幕と幕の間の休憩時間にサッと食べられるよう、一口サイズの俵おにぎりが発明されたと言われています。
現代においても幕の内弁当のごはんが俵形なことが多いのもその名残です。ただ、俵おにぎりは京と大坂から大きく領地を広げるには至りませんでした。

一方、東北から北陸地方に広がる「円盤おにぎり」は気候の産物。
雪深い東北地方の日本海側や北陸地方は、冬になるとなかなか外に出ることが難しく、多くが味噌や梅干し、米などの保存がきく食品で冬をしのいできました。
いざおにぎりを食べようとすると、寒さのためすぐに凍ってしまいます。そこで雪深い地方では「焼きおにぎり」が発達。さらに火が通りやすいよう、表面積が広い円盤型のおにぎりが普及しました。
今でも岩手のスーパーでは、梅干しの入った円盤型の味噌焼きおにぎりが売られています。

さて、現代では主流の「三角おにぎり」ですが、五街道が整備された江戸時代、旅人が持ち運びしやすいとの理由で発明されたとされています。
ただ当時は、江戸から東海にかけての一部に広がっていただけで、昭和40年代までマイナーな存在だったのです。
ところが、昭和50年代に「三角おにぎり」が下克上。
「まんまるおにぎり」は、一気にコロコロとマイナーな存在へと転落し、「三角おにぎり」が天下を取ったのです。

その革命的な出来事については、次回に語りたいと思います。


この記事を書いた人:関克紀
株式会社Tokyo Onigiri Labo代表/一般社団法人おにぎり協会理事
食品メーカー、出版社を経て独立。「日本米の消費拡大と価値向上」を掲げて幅広い事業を展開。さまざまな料理人、クリエーターらとコラボしながら、お米の更なる可能性を探求中。


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