すり鉢いらずで本場の味! 宮崎県郷土料理「冷や汁」
暑いというよりも熱いと言いたくなるような日が続く、現代日本の夏。
食欲もなくなりそうなときに、滋養たっぷりの「冷や汁(ひやしる)」はいかがでしょうか?
今回は焼いた魚と味噌の香ばしさや、さわやかな薬味の風味が楽しめる、宮崎県の郷土料理「冷や汁」をご紹介します。
暑い宮崎の「冷や汁」は天下一品
九州の南東に位置する宮崎県。
ここでは、豊かな大地や澄んだ水など、自然の恩恵を最大に活かした農業や漁業が行われています。
「冷や汁」は、夏の炎天下の宮崎県で農作業する人々に伝えられてきた料理です。簡単に食べられる栄養たっぷりの料理として親しまれてきました。
すりつぶした煮干しと白ごまに火で炙った味噌を合わせて、だし汁でのばしたものがいわば”冷や汁の素”になります。炊きたての麦飯にこの”冷や汁の素”をかけてから、仕上げに豆腐や大葉などの薬味を添えて頂きます。
塩分が補給できる味噌やさっぱりとした口当たりの夏野菜のおかげで、どんどん食が進むのだとか。
白米を食べることが主流となった現代でも、「冷や汁」には麦飯を使う慣習が残り、暑い夏もおいしく栄養を取れるヘルシーメニューとして広く食べられているそうです。
そもそも「冷や汁」とは、日本全国それぞれの地域で取れた魚や野菜を使って独自に発展してきた郷土料理とされています。現代では夏の暑さが厳しい場所や「冷や汁」に向いた食材が取れる場所だけに、この冷や汁文化が残っているようです。
例えばうどんの生産量が多い埼玉県では、冷や汁にご飯ではなくうどんを合わせます。夏野菜をたっぷり加えた汁にうどんをつけてツルッと食べるのだとか。「冷や汁」の読み方も「ひやしる」ではなく「ひやじる」というのが一般的のようです。
香ばしく焼いた味噌の香りがたまらない
本場の「冷や汁」は、いりこや白ごまをすり鉢ですって風味を引き出すようですが、今回は簡単バージョンで作ってみたいと思います。
いりこ→アジの干物、いりごま→すりごま、押し麦→もち麦で代用して、すり鉢いらずで作りたいと思います!
「冷や汁」の作り方
【 材料 】4人分
・白米 1合
・もち麦 0.5合
・アジの干物 1尾
・きゅうり 1本
・絹豆腐 1/2丁程度
・大葉 3枚
・みょうが 1個
・白すりごま 大さじ1杯
・味噌 大さじ4杯程度
・冷たいだし汁 500㎖程度
【 作り方 】
(1)白米ともち麦を研いで浸水し、炊いておきます。
(2)アジの干物を焼いて、身をほぐします。
(3)味噌をガスコンロのグリルで炙ります。
(4)だしをとって冷やします。
(5)きゅうりは小口切りに、大葉は千切りに、みょうがは輪切りにして、水にさらしてぎゅっと水気を絞ります。
(6)焼いた味噌をだし汁で少しずつのばします。
(7)(6)に(2)のアジ、(5)の野菜と手でちぎった豆腐を入れます。
(8)(7)にすりごまを加え、もち麦ご飯にかけたら完成です!
出来上がったのは、緑・白・茶色・ほのかなピンクの色合いが美しい、涼しげな一品。
口に運ぶ前からごまの香り、焼いた味噌とアジの干物の香ばしさが漂います。とろりと濃厚なスープを味わってみると、まず感じたのは味噌の塩辛さ。お味噌汁より塩気があるかもしれません。
それが暑い夏に流れた汗の塩分を補うのにちょうど良いのですね。
続いてきゅうり・大葉・みょうがの清涼感が鼻を抜けます。
この3つはほかの食材では代用できない夏独特の風味かもしれません。
もち麦を使ったためか、プチプチした食感も楽しめました。
「冷や汁」は暑く食欲がなくなる時期も口当たりがよくて食べやすい、疲れた胃腸にも優しい昔の人の知恵が詰まった料理だなぁとしみじみ実感しました。
また味噌のしょっぱさは、冷やしたビールに良く合います。
塗りのお椀によそってみると、「冷や汁」の表情も少し変わってオシャレっぽいですね。
これから夏本番を迎えますが、ひんやり冷たいこの料理で火照った身体をクールダウンさせて元気に過ごしたいものです。
この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。