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[どうしてそうなった!?]青天の霹靂

[どうしてそうなった!?]は、変わったお米のネーミングの由来についてご紹介していくシリーズです。
今後もユニークな名前のお米をたくさんご紹介しますので、お楽しみに!
今回ご紹介するお米は青森県の「青天の霹靂」です。

青天の霹靂

2015年2月。
毎年、日本穀物検定協会が実施している「食味ランキング」
もう50年近くも続いている日本有数の歴史ある格付けですが、そのランキングで「青天の霹靂」が最高位の「特A」となったことが発表されました。

その瞬間……青森県知事は記者会見で声を詰まらせながら
関係者への謝意を述べていました……。

青森県のお米は今まで「食味ランキング」で特Aの獲得がありませんでした。その壁をついに「青天の霹靂」が破ったのです。
まさにこの品種が青森県の米の歴史に刻んだのは「青天の霹靂」レベルのインパクトと言えましょう。

カタカタと、ひらがな表記。名前の違いとは

かつてお米の名前には暗黙のルールがありました。
国の試験場で開発された品種はカタカタ名、
県の試験場で開発された品種はひらがな名
……というものです。

前者はコシヒカリ、ササニシキなど。
後者はあきたこまち、ひとめぼれなど。

ただこういった慣習が出来たのは戦後の話。
それ以前は例えば「農林一号」「朝日」「日本晴」といった漢字名でした。

時は流れ……初めて品種名に「ひらがなと漢字の組み合わせ」という画期的(?)な名前が出てきました。それが山形県の「つや姫」です。

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青森県産米の置かれた「立場」

青天の霹靂」……雰囲気は一つ前の時代の流れを汲みつつ、しかし画期的な「ひらがなと漢字の組み合わせ」を体現。
味も最近のお米らしく「外はパリッと、中はジューシー」のいわゆる「外硬内軟」を実現させています。名前のインパクトもそうですが、味についても特Aにふさわしいお米なのです。

「青天の霹靂」の凄さをお分かりいただいた上で……話を戻します。
凄いのは兎も角、なぜ冒頭のように知事が涙するのでしょうか? それを理解するには青森県産米の置かれた「立場」を知る必要があります。

東北地方は日本全国でお米生産量の3割ほどを占める「日本の穀倉地帯」。青森県・秋田県・岩手県・宮城県・山形県・福島県。各県ともお米の名産地や有名な品種を抱えています。そしていずれの県も冒頭にある食味ランキングで特Aを獲得しているのです。……そう、青森県を除いて。

課せられた使命

青森県は昔からお米の栽培が盛んな地域です。
先達の苦労により寒冷な地域でありながら津軽平野を中心に大規模農業を展開してきました。
ところが味についてはあまり評判がよくありません。
それは北海道のお米がかつては「やっかいどう米」と揶揄されたように、寒冷地では美味しいお米が生まれにくいのです。

ところが同じ条件……否、もしかしたら青森県よりも条件が厳しい北海道で「ななつぼし」が特Aを初めて獲得したのです。
以後、北海道のお米は「ゆめぴりか」「ふっくりんこ」といった特Aの常連のお米が立て続けに出てきました。

日本有数の稲作県としてこれ以上取り残されるわけにはいかない。
「特A獲得こそ課せられた使命」。その期待を背負って開発されたのが「青系187号」。いまの「青天の霹靂」です。

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「質」の追求

青天の霹靂。この名前は一般公募で決まりました。
しかし最も多かった名前……ではありません。「青森県の意気込みを表す名前はどれか」。

委員会にて検討され、最終的には知事の名で発表されました。
「青天」は青森県の空を意味し、
「霹靂」は今までにないお米の味……を表現しています。
名前のインパクトは十分。

ちなみに……米屋がこの名前を見てまず最初に思ったのは「漢字が難しくて書けない……」だったとか。

生産者の話を聞くと、栽培が難しくまた収穫したお米であっても一定の基準をクリアしないと「青天の霹靂」と名乗れないこともあり、生産量は伸び悩んでいます。

しかし、青森県が「青天の霹靂」に求めるのは「質」です。品質管理が行き届いていないと味にばらつきが出てしまい、結果として評価が下がり値段が下がるという悪循環にはまります。青森県はそのループにはまらぬように頑固に美味しいお米を作り出そうとしているのです。

この記事を書いた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)


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