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納豆が食べやすくなる!?茨城県の郷土料理「そぼろ納豆」

納豆って、においはともかく、実は思っているよりも味がしません。
だから様々な食材との相性が良好なのです。
今回取り上げるのは、茨城県に伝わる郷土料理「そぼろ納豆」。「そぼろ納豆」とは、納豆と切り干し大根を合わせて、塩や醤油などに漬けこんだ水戸市の伝統的な料理です。納豆に切り干し大根を組み合わせたらどうなるの……? ぜひ、納豆が作り出す新しい世界をお楽しみください。

源氏に徳川家も? 納豆と日本の歴史の深い関係

納豆といえば、独特のにおいや粘り気が特徴ですね。
煮た大豆を納豆菌の力で発酵させて作ったのが、納豆です。その始まりは、なんと平安時代まで遡るようです。
時は1083年、源義家が「後三年の役」の戦いのために、茨城県に宿泊したときのこと。家来が煮豆の残りを稲のわらで包んでおいたところ、自然に発酵してできたものが納豆でした。これを義家に献上したところ、とても喜んだといいます。そこで「将軍に納めた豆」という意味から「納豆」と名づけられたそうです。

さらに1657年には、2代水戸藩主の徳川光圀が、有事に備えての備蓄食料として納豆作りをサポートします。そして明治時代になると、納豆の製造技術が確立しました。鉄道が通るようになり、開業したばかりの水戸駅でこの納豆を販売したところ、観光客の人気を集めたのだとか。

納豆と切り干し大根をしょうゆで漬け込んだのが「そぼろ納豆」

「納豆なんてどれも同じで、付属のたれとからしを加えて混ぜるだけ」なんて思っていませんか?
納豆の種類は意外と多く、食べ方もバラエティーに富んでいます。
例えば納豆の粒の大きさは、大粒、小粒、ひきわりなどがあります。材料となる大豆の産地も、北海道、山梨県や茨城県など様々で、地域によって特徴も異なるのです。

茨城県で作られる納豆は、小粒タイプです。
その理由は、台風が来る前に収穫できる早生小粒の大豆が栽培されていたからです。大豆を長期間美味しく食べる工夫として生まれたのが、納豆。
そして同じ時期に収穫して干していた大根を混ぜて、塩分を加えて保存食としたのが「そぼろ納豆」です。
このそぼろとは、干した大根を細かく刻んだもの=切り干し大根を意味しています。
つまり、納豆と切り干し大根のお漬物のようなものなのですね。普通の納豆よりも更に日持ちがするのが特徴です。

白いご飯に、お茶漬けに!「そぼろ納豆」を作ってみた

納豆にキムチや卵を混ぜたことはありますが、切り干し大根は試したことがありません。どんな味がするのか……。早速作ってみます。

【 材料 】2人分
・納豆     1パック(45g程度)
・切り干し大根(乾燥) 35g程度
・しょうゆ   大さじ1杯
・お酒     大さじ1杯
・ご飯     適量

【 作り方 】
(1)切り干し大根をさっと水で洗い、細かく刻みます。
(2)小鍋に刻んだ切り干し大根としょうゆ、お酒を加えて煮ます。

(3)粗熱が取れた(2)に、納豆を加えて混ぜます。
(4)付属のたれを加えたら、完成です!

\ 作り方のポイント /
材料も少ないお手軽料理です。特にポイントはありませんが、使う納豆は茨城県産の小粒タイプを選びました。

そぼろ納豆を炊き立てのアツアツご飯の上にのせて、パクっと食べました。とろりとした納豆のねばりとシャキシャキとした切り干し大根の食感が絶妙に混ざり合い、不思議な面白さを感じます。納豆にキムチや卵を混ぜるとその濃厚さが引き立ちますが、切り干し大根は反対にさっぱりとするのですね。おなじみのしょうゆベースの味付けに歯ごたえが加わると、何だか納豆らしからぬ雰囲気に。

次の日は、そぼろ納豆をだし茶漬け風にアレンジしました。白だしのスープに、三つ葉と煎りごまをトッピングしたものを納豆が得意でない家族にも食べてもらったところ……。
「あのにおいとねばねばが和らいで、おいしいかも」と評判も上々。
食べ進むうちにそぼろ納豆からうま味がにじみ出て、スープに深みを添えていきます。納豆のねばりけが味をまとめ上げ、さらには栄養面もアップしてくれます。切り干し大根と納豆の相性は、特筆すべき発見といえそうです。

納豆は、賞味期限ぎりぎりの頃が発酵が進み、うま味が増して美味しくなっているそうです。シンプルに温かいご飯と一緒に食べるのが美味しいですが、たまには「そぼろ納豆」を試してみてはいかがでしょうか。
だし茶漬けにしたり、餃子の具にしたりして、新しい食の楽しみを広げてください。

この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。

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