ほろ苦風味に驚いた! 山口県郷土料理「茶がゆ」
本州の最も西に位置する山口県。
アジア大陸に近いため、早くから稲作が伝わったとされています。
しかし大きな平野や盆地が少ないため、山の斜面に階段状に作った棚田を利用して米作りが行われてきました。
そこで生まれた、米を節約するための料理とは?
朝からコトコト……お米から炊いたおかゆは格別
三方が海に囲まれた山口県は漁業が盛んで、特に下関といえば日本随一のふぐの聖地と呼ばれるほど。
さらに温暖な気候をいかして、みかん栽培も行われてきました。
しかし米作りの方は田畑が少ないためにちょっと難しかったようで、節米が切実な問題だったといわれています。
そのような暮らしの中から生まれたのが、貴重な米を少しでも増やして食べる「茶がゆ」です。
たっぷりの水で炊くおかゆは、普通のご飯よりもお米が膨らむからです。さらに季節の野菜や小麦粉で作ったお団子などを加えて量を増やす工夫もしていました。
山口県内では「茶がい」とも呼ばれていて、主に朝ごはんに食べられているようです。「寝起きにおかゆ!?」と思うかもしれませんが、おかゆは消化がよく胃腸に負担をかけないので、実は朝ごはんにぴったりなメニューなのですね。
旬の野菜を加えてボリューム&栄養アップ!
お茶とお米だけで作ったスタンダードタイプから、野菜やお団子を加えてボリュームをアップしたものまで、好みのお茶や具材を加えてアレンジできるのが「茶がゆ」のいいところ。春はそら豆、夏はかぼちゃ、冬はさつまいもなど、野菜の中でもほっくりとした食感のものが茶がゆとは相性がよいようです。
また野菜を加えることで、栄養価も高まることも見逃せません。
例えばさつまいもは、食物繊維のほかビタミンやカリウムなども豊富です。食事の栄養バランスが偏りがちなときは、普段あまり食べない食材を茶がゆに加えれば、不足しがちな栄養素を補うことができます。
季節に応じて具材を変えればバリエーションが広がり、飽きることなく続けていけそうです。
お茶の苦みとお米の甘み「茶がゆ」を実食
おかゆをお米から作ったことはありませんでした。さぞ時間がかかるのかと思いきや、そうでもなく「茶がゆ」の完成までトータルで30分ほど。
意外に簡単に作れちゃいます。
「茶がゆ」の作り方
【 材料 】4人分
・米 1カップ
・水 8カップ程度
・ほうじ茶 15g程度
・さつまいも 1/2本(150g程度)
【 作り方 】
(1)お米を軽く洗ってざるにおきます。
(2)さつまいもの皮をむき、さいの目に切って水にさらします。
(3)ほうじ茶を茶袋に入れ、分量の水をはった鍋に入れてから火にかけます。
(4)ほうじ茶を強火で煮だします。目安は濃い紅茶のような色になるまでです。
(5)鍋から茶袋を取り出し、お米を加えます。
(6)8分のタイマーをセットし、鍋の蓋はしないで、強火でお米を炊いていきます。
(7)タイマーが鳴ったら、さつまいもを鍋に加えます。
(8)10分のタイマーをセットし、火加減を中弱火にして、アクを取り除きながら炊きます。
(9)再度タイマーが鳴ったら、出来上がりです!
\ 作り方のポイント /
お米の固さは好みもありますが、やや固めに仕上げるのがよいそうです。粘りを出さないように中弱火で炊きます。
ほうじ茶色のスープには、お米の粒々が残るおかゆとさつまいもが顔を出しています。塩で調味していないのでどんな味なのか想像できず、恐る恐る口に運んでみると……苦い!? ほうじ茶独特の渋みとかぐわしい香りをたっぷりと含んだおかゆは初めて食べる味わいでした。お米とさつまいものほどよい甘みがおかゆ全体に流れ出して、身体にじんわりとしみこむような滋味深さを感じます。塩を入れていないのは、お茶の香りを味わうためだったのかも?
調味していなくても十分な美味しさがあって、おかゆってご馳走だな……としみじみ思いました。
おかゆは特別な味付けをしなくても、お米の甘さが普通のご飯よりも感じられます。「茶がゆ」にすることでお茶の香りと渋みが加わり、やさしくもほろ苦い味わいに変わりました。
おかゆを特別なときだけ食べる料理にしておくのはもったいない! ぜひ普段の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。