お米を美味しく炊く秘訣は「研ぐ」のではなく「洗う」こと。
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お米を美味しく炊く秘訣は「研ぐ」のではなく「洗う」こと。

私は普通の米屋ですが、日常の業務以外に「人前で話す」という仕事も頻繁にあります。
自分で主催するイベントもあれば、ご要望をいただいて参加するイベントや、各地での講演に呼ばれることもあります。
その中で一般消費者向けのイベントがあります。そこでお客さんから必ずと言っていいほど尋ねられる質問が「お米を美味しく炊くにはどうすれば良いのでしょうか」です。
そしてその答えの一つとして話すのが「お米は『研ぐ』ではなく『洗う』が正しいです」なのです。

「毎回必ず出る質問」ということは、「毎回必ず話す回答」でもあるわけです。そして毎回毎回「へー、そうなんだー」と驚かれる「キラーコンテンツ」でもあるのです。
話す方としては毎回同じネタでも通じるので楽ではありますが(笑)、しかしいまだに「お米の常識」が世間に広まっていないではないか……というもどかしさもあります。
お米は昔のようにゴシゴシと研ぎません。優しく洗う、のが正しいのです。具体的には……手をソフトボールを持つくらいの大きさに広げ、その状態で水に浸したお米に手を突っ込みぐるぐるとかき回すような感じです。

お米は「研ぐ」ではなく、「洗う」理由

優しく洗う……その理由は大きく二つあります。

一つには、米粒が割れるのを避けるためです。
割れた米粒を炊飯すると、断面からでんぷんが溶け出し、それがごはんのベチャ付きの原因になり、食感を損ないます。
ベチャベチャしたごはんよりも、やはり米粒が舌で踊らんばかりの弾力があり、噛むともっちりしている! と思える方がいいですよね?
特に最近はそういった「外硬内軟」な食感を持つお米が流行っています。
例えば「つや姫」「さがびより」「にこまる」「青天の霹靂」「いちほまれ」等々……。「優しく洗う」はこれらの品種特性を最大限に生かすため……でもあるのです。

二つ目の理由は、お米の旨みを残すためです。
白米の部分と糠層の間には「亜糊粉層(あこふんそう)」という部分があり、この個所には旨み成分が多く含まれていることが分かっています。
私たち米屋はこの層をなるべく残すように精米しますが、お米をゴシゴシ研いでしまうとこの層まで流してしまうのです。
洗ったときの水が透明になるまで研ぐ必要は、実はないのです。水は少しくらい濁っているくらいの方が、実は良いのです。

しかし……なぜ昔はお米をゴシゴシ研いでいたのでしょうか?
その背景も見てみましょう。これも二つあります。

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なぜ、お米を研いでいたのか?

一つは精米機の性能の違いです。
今の精米機は性能が良いので、きれいに糠が除去できます。ところが昔の精米機では今ほどきれいに糠が除去できなかったため、「研ぐ」くらいの気持ちでもう一度糠を落とす必要があったのです。
昔の白米はそれこそ水に漬けただけで水が泡立つ……くらいに糠が残っていました。

もう一つは、米粒が傾向として今よりも硬かったということがあります。今は品種的にもそうですが、夏の酷暑の影響ででんぷんが「ギュッ」と充実していない米粒が多く、そういう面からも脆くなっているのです。

昔のお米はゴシゴシ研いでもそれほど割れませんでした。また、品種的に今ほどもっちりしていなかったので、米粒が割れて多少のベチャ付きが生じた方が実はごはんとしては柔らかくなるので、それはそれで美味しかったのです。そういった米の性質の違いも、「研ぐ」から「洗う」に変遷した背景の一つなのです。

ただ「研ぐ」にせよ「洗う」にせよ、目的は「お米の表面に残っている糠を除去すること」です。
このポイントを理解して押さえていれば、研ごうが洗おうが、それはあくまでの手段の話なので、調理する人の自由なのです。
例えば冬は寒いですから、直接水を手に漬けることなく「研ぎ棒」なる道具で研いでもいいのです。

「お米を洗う」以外でも、お米の炊飯工程には「意味」があります。その意味をまず理解することが、美味しいごはんに出会う近道になるのです。

この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)


いや〜お米ってほんとにいいもんですね……。
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