金曜日はカレーの日!神奈川県の郷土料理「よこすか海軍カレー」
日本人の誰もが好きな国民食と言えば、カレー!
欧風カレーやインドカレーなど様々な種類があり、家庭でも外食でも、またレトルトでも確実に支持を集めつつありますね。
その中でも、より土着で伝統的なカレーが「よこすか海軍カレー」です。
もともとは、明治時代の初めに日本海軍が健康管理のために食べていたのだとか……?
イギリス海軍に習った「よこすか海軍カレー」
明治時代の初めに創設された日本海軍の軍人は、栄養バランスが偏った食事によって脚気など病気に悩まされていました。そんな時に参考にしたのが、イギリス海軍で採用されていたカレー風味のシチュー料理です。
カレーには肉や野菜の他に、クミン・コリアンダー・ターメリックなどのスパイスも使われているため、新陳代謝の促進や暑さや寒さに対する適応力の向上など、洋上での健康効果が期待されていたのです。
イギリス式では、カレーにパンが組み合わされていましたが、日本ではパンの代わりにお米を採用しました。
カレー + 米(ライス)=カレーライスの誕生です。
また揺れる船の中でもこぼれにくいように小麦粉でとろみを付けたのが特徴的でした。横須賀は、海軍とともに歩んできた街ということで、現代でもカレーライス発信の地となっています。
金曜日にカレーを食べるのは、な~ぜだ?
海軍から海自(海上自衛隊)に変わった今も、カレーを食べる曜日は金曜日と決まっているそうです。
その理由は、遠洋航海中に曜日感覚を失わないために金曜日の食事メニューをカレーに固定したから。現在ではこの習慣は船上勤務の部隊に限らず、海上自衛隊全ての部署に広がり、 金曜日には食堂メニューにカレーが組み込まれるようになったそうです。
ここでもうひとつ、クエスチョンです。
海上自衛隊全体で、年間に消費されるカレールーの量はどれくらいでしょうか?
答えは、約45トン!
といってもピンときませんね。
1食あたりのルーの量は大体20グラム程度なので、海上自衛隊では年間に約225万食ものカレーが食べられていることになります。
現代風にアレンジ! 家庭で作る「よこすか海軍カレー」
明治41年に発行された「海軍割烹術参考書」には、当時の日本海軍が調理していた軍隊食のレシピが記されています。
カレーの作り方についても記載があり、このレシピをもとに、現代風にアレンジしたカレーを「よこすか海軍カレー」と呼んでいるようです。
本来は、カレー粉と小麦粉を使うようですが、手軽にカレールーを使って作ってみました。
【 材料 】4人分
・ご飯 適量
・牛肉 300g程度
・じゃがいも 2個
・人参 1本
・玉ねぎ 3個
・牛脂 少し
・カレールー 170g
・水 800mL(カレールーの表示通りの量)
【 作り方 】
(1)牛肉はひと口大に切り、軽く塩・こしょうをしておきます。
(2)野菜を切ります。ジャガイモは皮をむいてさいの目切りにし、水にさらした後で水気を切ります。人参と玉ねぎも同じようにさいの目切りにします。
(3)お鍋に牛脂を入れて、熱します。玉ねぎを入れて中~強火で3分程度炒め、続けて牛肉を加えて焦げ色がつくように炒めます。じゃがいもと人参も加えて中~強火でさらに5分程度炒めます。
(4)野菜がやわらかくなったら水を加えます。煮立ったら弱火にして、アクを取り除き20分程度煮込みます。
(5)火を止めてカレールーを加え、よく混ぜます。弱火で焦がさないように、トロッとするまで混ぜます。
(6)お皿にご飯を盛り、カレーをかけます。
(7)牛乳とサラダ(材料外)を添えて、完成です!
\ 作り方のポイント /
煮込むまでは中〜強火にして具材をよく炒めることがおいしさのポイントかもしれません。
玉ねぎは炒めているうちにあめ色となっていき、甘味が引き出されます。
「よこすか海軍カレー」には、牛乳とサラダがセットになっているそうなので、同じように配膳しました。
カレーを一口食べてみて感じたのは「どこかで食べたことがあるかも」というノスタルジア。
実家で母が作ってくれたカレー、学校給食でクラスメイトと食べたカレー、アウトドアでみんなで作ったカレー……など、多くの人が、カレーにまつわる楽しくておいしい思い出を持っていると思います。
そのどこかで食べた味と重なるような気がしました。
具材は牛肉と野菜だけですが、よく炒めることによってうま味とコクが十分に引き出されています。
食欲をかきたてるカレーをご飯にたっぷりとかけて食べる、サラダで口直しをして、冷たい牛乳を飲むというプロセスも、何だか学校給食が思い出されます。
インドカレー、スープカレーに焼きカレーなど、たくさんのカレーを食べて、一周回って落ち着くのはこのスタンダートなレシピのカレーなのかもしれません。
かつての日本海軍のカレーを再現したのが「よこすか海軍カレー」。
横須賀のご当地グルメとしても知られ、海軍ゆかりの土地である横須賀市は「カレーの街」と言われているようです。一方で「海自カレー」というものもあり、このカレーは海上自衛隊の部隊や艦艇で現在も食べられています。こちらは地域によって全くレシピの異なるカレーなのだとか。
100年以上前のカレーレシピが今も残り、味付けや盛り付けを変えながら様々な地域で根付いているなんて不思議ですね。
今夜もどこかでカレーを作っておいしく食べているのでしょうか。
「よこすか海軍カレー」から、奥深いカレーの世界が垣間見えた気がします。
この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。