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「ヒーローみんな大好き」と言えば!?民をまとめた長崎県の郷土料理「具雑煮(ぐぞうに)」

郷土料理とは、地域の特産物を使って風土に合った調理方法で生み出された伝統料理のこと。長い日本の歴史と地域に住む人々によって築かれた食文化です。

今回ご紹介する長崎県の「具雑煮」は、なんと日本の歴史の教科書にも登場するあの人物が戦いの中で生み出した料理とされているのだとか……?

海の幸と山の幸が盛りだくさん! 島原の代表料理「具雑煮」

お雑煮といえば、日本で古くから親しまれている伝統料理です。縁起がよい食べものとして、お正月に食べる風習が今でも残っていますね。
お雑煮はその土地ごとにお餅の形、だしや具材のバリエーションが豊富にあります。長崎県の島原地方では「具雑煮」と言われ、とにかく具がたくさん! 鶏肉、魚や野菜に豆腐など、10種類以上の食材をだしで煮込みます。

お鍋のスープに使うのは、九州の特産品である、あごだしです。
あごだしの原料となるのは、乾燥させたトビウオです。海上を高く飛ぶトビウオは、他の魚よりも脂肪分が少ないため、だしにすると雑味が少なくなるそうです。そのためスッキリとした上品な風味が魅力。古くから九州では、縁起のよい高級食材として親しまれてきました。

長崎県の豊かな山の幸と海の幸が盛り込まれた「具雑煮」は、本来は家庭料理でしたが、郷土料理として有名になり、農林水産省選定の「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれました。

みんなヒーローが大好き! 「具雑煮」は島原の乱がはじまり

日本全国に個性豊かなお雑煮はたくさんありますが、「具雑煮」ほど歴史と関わりが深いものも珍しいかもしれません。
それは今から370年ほど前、長崎県で起きた島原の乱がきっかけでした。

当時の島原地方では、新領主による過度な年貢の取り立てがありました。さらに飢饉が起こりキリスト教徒への弾圧も激しくなったことから、ついに民衆は反乱を起こしました。これが1637年(語呂合わせ:天草四郎ヒーロー(16)、みんな(37)大好き)に起きた「島原の乱」です。

反乱の総大将・天草四郎は、旧領主のキリシタン大名であった有馬家の原城に籠城します。その際、日持ちのするお餅や城下町から集めた食材を大鍋で煮たものが「具雑煮」のはじまりだったといいます。一つの鍋の具雑煮を大勢で食べることで、民衆の士気が挙がったのかもしれません。

お正月や受験生の夜食にも! ほっこり温まる「具雑煮」

まさか江戸時代に天草四郎が考案した料理が、令和時代に家庭で食べられるなんて! 早速作ってみたいと思います。

【 材料 】4人分
・【A】鶏もも肉(一口大に切る) 1枚(約250g)
・【A】白菜 1/4本
・【A】大根 10cm程度
・【A】人参(小) 1本
・【A】里芋(水煮) 6個
・【A】ごぼう 1本
・【A】長ねぎ 1本
・【A】しいたけ 6個
・【A】あごだしパック 2つ
・【A】水 1200mL(あごだしパックに記載の分量) 
・【A】しょうゆ 大さじ2杯
・【A】みりん 大さじ1杯
・小松菜 1/2束
・かまぼこ 6枚
・豆腐 1パック
・丸餅 6個
・ゆず 適宜
・ゆず胡椒 適宜

材料 :4人分

【 作り方 】
(1)野菜を切ります。白菜は長さ3cm位のざく切りに、大根と人参は皮をむいてから幅5mm位のいちょう切りに、ごぼうは皮をむいてから長さ5cm位のななめ切りに、長ねぎと小松菜も長さ5cm位の斜め切りにします。

(2)お鍋に【A】の材料を全て入れて、中火にかけます。沸騰したら弱火にして20分煮ます。

弱火で20分煮る

(3)大根やごぼうが柔らかくなっていたら、小松菜・かまぼこ・豆腐・丸餅を入れてさらに弱火で10分煮ます。

弱火で10分煮る

(4)小松菜がしんなりしたら火から下ろして、お好みで千切りにしたゆずの皮を添えて完成です!

\ 作り方のポイント /
特にありませんが、練り物、ごぼうやきのこ類を入れるとだしに深みがでるので、ぜひ!
あごだしからとれるだしは、澄んだ黄金色をしていて深いコクがあります。それに鶏肉とたくさんの野菜から出てきたうま味がギュッと凝縮されて、芳醇なスープとなりました。とろけた丸餅を口に含むと、アッチッチ! 出来立てはかなり熱いので、どうぞやけどにご注意くださいね。
やわらかなお餅とくたくたに煮込まれた野菜は、あごだしとも相性抜群! 温かいスープを飲むと、島原地方で育まれた食材の滋味深さが身体に染みていくようです。野菜を大ぶりに切ると食べ応えが増しますね。
お餅も入っているので、見た目以上にお腹が膨れます。この具雑煮を食べながら天草四郎は戦ったのか……遠い歴史に思いを馳せると一層味わい深さを感じられますね。
そのまま食べてもとても美味しいのですが、ぜひ味変に、ゆず胡椒を試してみてください。くたくたに煮込まれた白菜にゆず胡椒を少し付けて食べると、ピリッとしたさわやかな辛さでさっぱりと美味しく食べられますよ。

まとめ

あごだしのスープでたっぷりの野菜と一緒にお餅を食べる「具雑煮」。寒い季節にフーフーしながらほおばると、身体をほっと温めてくれます。お餅は腹持ちもいいため、受験生の夜食にもぴったりです。栄養価も高い「具雑煮」を、お正月だけではなく普段の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。


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