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足袋で踏む!? 山口県郷土料理「岩国寿司」

今や日本食の代名詞とも言えそうなお寿司ですが、その種類は多種多様です。握り寿司、ちらし寿司、手巻き寿司……海外発のカリフォルニアロールまで。

今回ご紹介するのは、山口県の岩国市に伝わる押し寿司で、別名「殿様寿司」とも呼ばれているのだとか……。

「殿様寿司」の名にふさわしい大きく華やかなお寿司

山口県の岩国市は、かつて城下町として栄えた歴史を持ち、現在でも多くの歴史・文化遺産を残す美しい町です。

シンボルに掲げるのは、300年ほど前に建てられた五連アーチの「錦帯橋」、そして郷土料理の「岩国寿司」です。
 
江戸時代に岩国藩主に献上されたという言い伝えから「殿様寿司」とも呼ばれ、華やかな彩りと四角く整った形が特徴です。具材となるのは土地の名産岩国れんこんの酢漬けやチシャ(サニーレタスに似た伝統野菜)、青菜、錦糸卵やでんぶなど、地域や家庭によって様々。

冠婚葬祭などでの定番料理の一つで、結婚式の際にウェディングケーキの代わりに岩国寿司をふるまうこともあるそうです。

岩国の伝統! 職人さんが踏んで押し固める

五連の錦帯橋にちなんで、酢飯と具材を交互に五段重ねて作ったとも言われている「岩国寿司」。

まず底にチシャの葉を敷き、酢飯を詰めます。

その上に岩国れんこんの酢漬け、錦糸卵、穴子などの具材を順番に重ねていき、最後に木の蓋を乗せて重しをかけます。
 
大きな岩国寿司を作るときは、職人たちが蓋の上に乗って足で踏み固めていたそうです。殿様の前で失礼のないように、白い足袋を履いてお寿司を踏むのが岩国の伝統!

そして寿司枠を思いっきり引き抜けば、美しい「岩国寿司」の完成です。出来上がったお寿司は、一人前ずつ四角い形に切り分けて食べます。

彩り豊かな具材を詰めるのが楽しい!「岩国寿司」

大きな木枠で作るのが一般的ですが、家庭では牛乳パックやケーキ型といった身近なもので代用できます。
家にあったセルクル型で作ってみることにしました。

「岩国寿司」の作り方

【 材料 】3~4人分
白米 300g
■A:白米用
・水 350㎖
・昆布 3g
・酒 大さじ1杯
■B:酢飯用
・砂糖 大さじ2と2/3杯
・酢 大さじ3杯
・塩 小さじ2/3杯 
 
れんこん 90g
■C:れんこん用
・砂糖 大さじ2/3杯   
・酢 大さじ2/3杯 
・酒 小さじ1杯
・塩 少し 
 
干ししいたけ 4枚
■D:干ししいたけ用
・干ししいたけの戻し汁 100㎖
・砂糖 大さじ2/3杯
・しょうゆ 小さじ1と2/3杯
・酒 小さじ1杯 
・みりん 小さじ1/2杯
 
・卵 2個
・春菊 半パック
・さくらでんぶ 15g
・サニーレタス 2枚
・穴子 お好みで

【 作り方 】
<酢飯作り>
(1)白米を洗って水気を切っておきます。
(2)■Aを加えて炊きます。
(3)ご飯が炊けたら■Bをまわしかけて、しゃもじで切るように手早く混ぜます。
 
<具材作り>
(1)れんこんを2mm程度の半月に切り、お湯で2分茹でてから■Cにつけておきます。
(2)干ししいたけを水でもどしておき、千切りにしてから■Dで煮ます。
(3)卵を薄く焼いて千切りにし、錦糸卵を作ります。
(4)春菊を茹でて水で冷やし、3cm程度に切っておきます。

<成型>
(1)容器にサニーレタスを敷き、その上に半量の酢飯→れんこん→しいたけ→錦糸卵→さくらでんぶを順番に乗せます。

(2)上からギュッと押してから、もう一度酢飯→れんこん→しいたけ→錦糸卵を乗せて、押します。
(3)ラップをかけて30分程度寝かせた後、さくらでんぶと穴子を飾り、型から外したら完成です!

本来は酢飯と具材を何段も重ねて作りますが、一段作ったところで容器の高さに達してしまいました。「殿様寿司」と言うだけあって、手間も少しかかります。でも小さな型に、ご飯と具材の配色を考えながら詰める作業はとても楽しいものでした。
キャラ弁などのお弁当作りも同じだと思うのですが、箱庭的なものを好む日本人のDNAが騒ぐのかもしれませんね。
 
そーっと型からお寿司を引き抜きます。上からラップで圧力をかけ、スプーンでおさえながら崩れないようにゆっくり慎重に。現れたのは、彩り豊かな愛らしい「岩国寿司」!

ピンク色のさくらでんぶ、黄色い錦糸卵、緑色の菜の花。そしてアナゴや干し椎茸の茶色が、白い酢飯と一緒にレイヤーを作り、美しく収まっています。ぎゅっと押された酢飯は程良い弾力と柔らかさを保っていて、硬すぎることはありません。甘辛く煮た干し椎茸や穴子、ほろ苦い菜の花とさっぱりした酢飯の相性はもちろん抜群です。
 
この「岩国寿司」を見た家族の第一声は

「すごいきれい! おいしそう!」
でした。

たまにはこうやって丁寧に料理を作るのもいいですね。

一緒に食べた思い出が幸せな記憶となって、心の中に残ればいいなと思います。きっと郷土料理はこうして数々の家庭で作られ、温かく幸せな時間と共に受け継がれてきたのだな、と実感しました。

この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。

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