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[誰がブランドを決めるのか?]ななつぼし編

「ななつぼし」……北斗七星から名前をとった、北海道のブランド米です。
「ななつぼし」は米屋から見て面白いお米です。一般消費者から広く支持されている一方で、レストラン等の業務用でも使われています。
用途を問わず人気の高い「ななつぼし」は、どのように生まれ、どのように広まったのでしょうか……。

北海道における稲作

その前に北海道における稲作について紹介します。
北海道の農業はかつては畑作や酪農が中心でしたが、1873年に稲作を開始して以後、自然の厳しい北海道の気候に苦労しながらも、この地に適した米作りを進めてきました。

「温暖化が進んでいるからコシヒカリも北海道で栽培できるのでは?」と質問を受けることがありますが、違います。
本州で栽培されているお米が北海道で栽培できるとは限りません。それは稲の持つ「短日性」によるところが大きいのです。

稲は日照時間が短くなると秋を感じ、穂をつけるようになります。これを「短日性」といいます。ところが北海道では緯度が高いため日照時間が長く、その結果、穂が稔るタイミングを逸してしまうのです。そのため北海道の品種は短日性が弱い、道オリジナルの品種になるのです。

「ななつぼし」が特Aを獲得するまで

北海道でここまでの米が出るとはな……。
これは間違いなく売れる。」


小池精米店の2代目(私の父)の当時の感想です。北海道の新品種「きらら397」が1988年に誕生しました。
北海道のお米は生産量こそ上向いてきましたが、あまり美味しくなかったため、いつしか「やっかいどう米」とまで言われてました。
その中での「きらら397」の食味の良さは、非常に衝撃的でした。

この「きらら397」を生み出したのが北海道立の農業試験場が行った「優良米の早期開発試験」プロジェクトです。1980年から始まり「きらら397」の誕生に結び付くわけですが、ここで「ななつぼし」も生まれました。
2001年のことです。

いっぽう北海道では販売活動にも力を入れてきました。
農業団体や生産者団体らによって「北海道米販売拡大委員会」が設置され、まだ北海道米が今ほど美味しいお米ではなかった時から、各地で北海道米の認知拡大や販売促進活動などを行ってきました。

北海道の農協組織であるホクレンは、外食産業や加工食品メーカーに積極的に営業をかけています。その甲斐あって「ななつぼし」は外食レストランチェーンや寿司屋で使われるようになるなどBtoBでも支持層が広がっていったのです。

そして……2010年「ななつぼし」が北海道米で初めて食味ランキング(穀物検定協会主催)で最高位「特A」を獲得しました。食味ランキングはメディアに取り上げられることが多く、また北海道で初めて「特A」を獲得したということで「ななつぼし」が消費者に広く知られるきっかけになった出来事でした。以後、ななつぼしの評価は毎年安定しており、それ以来、特A獲得は11年連続になります。

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オール北海道の想い

ホクレンはここ毎年、全国的に「ゆめぴりか」のテレビCMを流しています。「ゆめぴりか」とマツコ・デラックスさんの組み合わせがあまりに斬新で「ゆめぴりか」の知名度はぐんと上がりました。しかし「ゆめぴりか」はある意味癖のある味です。

いっぽうで「ななつぼし」は「ゆめぴりか」と対極な味で、粘りが強かったり、甘みが強いのは苦手、といった消費者を拾い上げるには最適なお米でした。それを意識してか2年ほどの前のバージョンでは、「ゆめぴりか」と並んで「ななつぼし」も登場しました。
味の違いがはっきりと判るということもあり「ゆめぴりか」と並んで「ななつぼし」の評価も上がっていったのです。

「ななつぼし」のブランドは、「美味しいお米を作りたい!」というオール北海道の想いが結実した証なのです。

この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)