見出し画像

「チャーハン」と「焼き飯」って何がどう違うの?

町中華に欠かせない料理といえば「チャーハン」です。
若かりし頃、東京・神田神保町界隈で多くの時間を過ごした筆者も然り、
昭和から平成の時代、多くの学生や若いサラリーマンたちが
麺類と半チャーハンのセットメニュ―「半チャンラーメン」で、腹を満たしていました。
しかし、隆盛を誇った町中華も、最近は高齢化と後継者不足の波に抗えず、
「半チャンラーメン」発祥の店とされていた神保町「さぶちゃん」も
数年前に惜しまれつつ閉店してしまいました。

一方、「チャーハン」ではなく「焼き飯」とメニューを掲げる町中華も多く見受けられます。

NHKや日経新聞の調査によると、関西以西で「焼き飯」と呼ぶケースが多いようで、滋賀や和歌山では焼き飯優勢、岐阜や三重ではチャーハン優勢と、
その境界は福井県―琵琶湖東岸―和歌山・三重県境を結ぶ線辺りを通っているようです。

では、実際にその両者の違いはどこにあるのか。
辞書で調べてみました。

チャーハン【炒飯】
中国料理の一つ。米飯を焼き豚・エビ・シイタケ・ネギ・卵などの具とともにいため、醬油・塩などで味をつけたもの。焼き飯。

やきめし【焼き飯】

①チャーハン。
②握り飯をあぶって、表面に焦げ目をつけたもの。焼きむすび。

うーん、両者は同じものと書かれていますね……。

しかし、注目すべきは
「やきめし」の②にある「焼きむすび」という点です。

以下、NHK放送文化研究所の塩田雄大研究員の説を引用します。

(1)日本国語大辞典によると「焼きめし」という言葉は17世紀前半の狂歌にすでにあらわれている。

(2)しかし、これは焼いたおにぎり、すなわち今日の焼きおにぎりのことを指し、主に東日本で用いられる言葉だった。

(3)明治以降、日本に中国から炒めたご飯料理の「炒飯」が伝わり、日本では「炒(い)り飯」「焼きめし」あるいは「チャーハン」と呼ぶようになった。

(4)しかし、東日本ではこの料理を焼きめしと呼ぶと、焼いたおにぎりと混同が生じる(言語学でいう「同音衝突」)。そこで従来の焼きめしを焼きおにぎりと言い換え、同時に炒めた方はチャーハンと呼んで区別するようになった。

(5)西日本ではこのような悩みがなかったので焼きめしという呼び方がそのまま定着した。

なるほど、これであれば「チャーハン」「焼き飯」の地域偏差の説明はつきますね。

もうひとつ、両者を区別する大きな違いとして、

「チャーハン」は中華鍋で料理するもの
「焼き飯」は鉄板で料理するもの

という説も有力です。

コナモン文化圏である関西以西では、鉄板焼きが日常生活に溶け込んでいます。鉄板料理を食べながら、余った具材とごはんを一緒に炒め焼く。焼きそばとご飯を一緒に炒めながら焼く「そばめし」などは典型ですね。
焼き飯は醤油やソース系、チャーハンは塩・コショウ系の味付けが多いのもそのためでしょう。

しかし辞書にもあった通り、両者に明確な違いはない、もっと言えば「時代とともに両者の違いがなくなった」というのが正解かと思います。

というわけで、日本の食卓に欠かせない存在の「チャーハン」&「焼き飯」ですが、西洋の代表料理「ピラフ」と起源が同じと言われています。「チャーハンとピラフの違い」については、こちらの記事をご参照ください。

この記事を書いてくれた人:江戸川渓谷(えどがわけいこく)
プロフィール:三度の飯とおにぎりが好き。趣味は道の駅めぐりに商店街散策、メタボ対策のトレッキング。うまいものは足で稼ぐのが信条。ゲットした惣菜で晩酌するのが最近の楽しみ。