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「米」が姿を変え、「次」は何に? 岩手県の郷土料理「豆しとぎ」

「しとぎ」とはあまり耳慣れない言葉ですが、お米をつぶして粉にして作ったおもちのことを指しています。
これに大豆を混ぜたものを「豆しとぎ」と言い、古くから神前のお供えものとして欠かせない食べ物だったとか……。
今回は岩手県で受け継がれる郷土料理の「豆しとぎ」をご紹介します。

お米が次に姿を変えたのが「粢(しとぎ)」

どこか美しい響きを持つ「しとぎ」という名前の食べ物は、生のお米をついて粉にし、水でこねて丸めたものを指しています。
お米を材料としたこのシンプルな食べ物は、おもちの原型ともいわれ、古くから神前のお供えものとして扱われてきました。

「しとぎ」を漢字で書くと「粢」。
つまり、稲作文化が受け継がれてきた日本で「米」が姿を変え、「次」になる食べ物が「しとぎ」ということなんですね。
この小さくて丸い食べ物には、豊作祈願や自然への感謝などが込められ、祝い事や祭りなどがあったときに作られていたそうです。

北東北と九州の一部の地域で受け継がれている「しとぎ」

かつては日本の各地で「しとぎ」が作られていたようですが、現在でも残っているのは岩手県を中心とする北東北地方と九州地方のごく一部のようです。

北東北地方で伝わる「しとぎ」は、神前に捧げるものとして「おしとぎ」と敬意を込めて呼んだり、少しなまって「すっとぎ」と呼んだりもしているそうです。
「しとぎ」の作り方は、米粉を練って丸めて、お団子のようにして食べるのが主流ですが、「豆しとぎ」と呼ばれるものは、青大豆をペースト状にしたものを米粉に練り込みます。

なぜ米粉に大豆を加えたかというと、岩手県は冷害に見舞われやすい地域であることが関係しています。お米が貴重だったため、大豆を加えた豆しとぎが郷土料理として受け継がれてきました。

生でも焼いても2度おいしい! 淡い緑色の和菓子をおうちで

「豆しとぎ」は青大豆の代わりに枝豆でも作ることができるようですが、乾物の青大豆が手に入ったので、思い切って豆をゆでるところから作ってみることにしました。
パッケージに記載されている調理時間の長さに、ちょっとやる気が失せそうになりましたが、調理工程は少ないので手間はそれほどかかりませんでした。

「豆しとぎ」の作り方

【 材料 】4人分
・青大豆 100g(乾物)      
・米粉 100g
・砂糖 大さじ2杯
・塩 小さじ1杯
・青大豆のゆで汁 大さじ4杯程度    

【 作り方 】
(1)青大豆を豆の3倍量の水に一晩浸します。
(2)お鍋に水を入れ、沸騰したら塩を入れます。青大豆を入れて、あくを取り除きながら30分程度ゆでます。
(3)ゆで上がった青大豆200gをフードプロセッサーなどでペースト状にします。

(4)(3)に米粉と砂糖を混ぜます。ゆで汁を少しずつ足しながら1つにまとめていきます。

(5)クッキングシートの上でよくこねて、円柱状に成形します。


(6)30分程度寝かせた後に切り分けたら、完成です!

\ 作り方のポイント /

乾燥した状態の青大豆をゆでると、約2倍に膨らみました。青大豆:米粉を2:1の割合で混ぜます。なめらかな口当たりにするために、よくこねることが重要とのこと。パン生地をこねるように、手の平を使ってしっかりとこねました。

「豆しとぎ」はそのまま食べても焼いて食べてもOKのようですが、まずは生の豆しとぎを口に含みます。さわやかな青緑色で見た目も美しい「豆しとぎ」。上品な甘さの中に青大豆の香りや風味がギュッと凝縮され、粒々とした食感もたまらなくおいしい!

さらにバターで焼いたものも実食。豆の香ばしさが増し、モチモチした食感と甘味が引き立つように感じました。青大豆の風味にバターのミルキーなコクが加わって、和菓子でありながら洋風の味わいが楽しめました。

生も焼いたものもそれぞれのおいしさがあって、どちらかに軍配を上げることができません。
おうちでぜひ作って、味の違いを確かめてみて欲しいと思います。

元々おもちはハレの日の食べ物でした。
「豆しとぎ」も人生の節目を彩る大切な存在としてさりげなく暮らしの中に存在してきたのでしょう。素朴ながら風情あふれる味は、大切な郷土料理として今後も語り継いでゆきたいものです。
余談ですが、乾物の青大豆は一度にゆでてから小分けにして冷凍保存しました。良質なたんぱく源なので、スープに加えたりサラダと和えたりと何かと重宝しました♪

アレルギーについての注意点
掲載しているレシピには、特定のアレルギー体質を持つ場合にアレルギー反応を引き起こすおそれのある食材を含むことがあります。
特に初めて口にする赤ちゃんにはご注意ください。

[ 特定原材料 ]
卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生

[ 特定原材料に準ずるもの ]
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、 ごま、カシューナッツ

この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。

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