ごはんがススム魚たち「あなご」
夏に旬をむかえる魚といえば「あなご」です。
漁場としては長崎の対馬海域が有名で、瀬戸内海から東京湾、宮城にかけて、大陸棚や沿岸の砂泥地に生息しています。
ごはんとの相性抜群の「あなご」
その食べ方はさまざまで、蒲焼や天ぷら、寿司ネタにと、ごはんのお供に幅広く親しまれています。
蒲焼にしたあなごを、あつあつごはんの丼に豪快に盛りつけた「あなご飯」は、安芸の宮島参拝に欠かせない名物料理として全国的に知られています。
また、寿司飯に煮あなごやれんこん、錦糸卵を何層も重ねてつくる山口の「岩国寿司」は、ハレの日の郷土料理として有名です。
「うなぎ」じゃないよ、「あなご」だよ
さて、「あなご」と言えばどうしても避けて通れないのが「うなぎ」との違い。
両者は姿・形が非常に似通っていますが、それもそのはず。
あなごはウナギ目アナゴ科に属しており、言わばうなぎの親戚です。
ところが、その生態は大きく異なります。
うなぎは「海で産卵、海で生まれ川で育つ、降河回遊魚」であるのに対し、あなごは「産卵後も浅瀬で育つ海水魚」です。
また、他にもこんな違いが挙げられます。
うなぎは下あごが出て、あなごは上あごが出ている。
うなぎは背中が濃い灰色でお腹が黄身のある白に対し、あなごは全体が薄茶色で白い斑点がある。
うなぎの尾びれは丸みがあるが、あなごの尾びれは尖っている。
などなど、よく見ると両者には結構な違いがあるのです。
また脂質量にも大きな違いがあり、うなぎの脂質はあなごの2倍以上あり、こってりとしたうなぎに対し、さっぱりとしたあなご、という構図になっています。
あなごが寿司ネタに選ばれるのは、こういった理由もあるのです。
あなごの稚魚「のれそれ」
南国土佐では「水の妖精」とも呼ばれ、酒呑みの珍味として重宝される「のれそれ」。ごく稀に、都会の寿司屋でも見かけるレア食材です。
実はこの正体こそ、あなごの稚魚です。
白く透き通った葉っぱのような形が特徴的で、シラスと一緒に取れることが多いそう。
もみじおろしを添えたポン酢で刺身に、軍艦巻きをわさび醤油で。
卵とじに、茶碗蒸しに、かき揚げにと、さまざまな料理で楽しめます。
春から夏の間、滅多にお目にかかれない「のれそれ」を見かけたら、ぜひお試しくださいね。
この記事を書いてくれた人:江戸川渓谷(えどがわけいこく)
プロフィール:三度の飯とおにぎりが好き。趣味は道の駅めぐりに商店街散策、メタボ対策のトレッキング。うまいものは足で稼ぐのが信条。ゲットした惣菜で晩酌するのが最近の楽しみ。