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おいなりさんとは何が違う?鳥取県郷土料理「いただき」にびっくり

見た目は大きないなり寿司のようだけど、調理法や味わいが異なるのが鳥取県の「いただき」。脳がいなり寿司を想像していると、食べて味のギャップに驚くかも……。

砂丘に港、鳥取県の恵みを味わうなら

鳥取県といえば、鳥取砂丘を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実は鳥取県には他にも砂丘があり、例えば中部には北条砂丘が、さらに西部には砂だけでできた砂丘半島の弓ヶ浜半島があります。

この弓ヶ浜半島〜米子市にかけて親しまれてきた家庭料理が「いただき」です。
 
一見いなり寿司のように見えますが、「いただき」は酢飯では作りません。油揚げの中に、お米・ごぼうや人参などの根菜を詰めて、甘辛味でコトコト炊き上げた料理です。以前は堺港で取れた赤貝の煮汁で炊いていたようですが、いつしかお米と根菜を煮る現在のスタイルに。たっぷりと出汁を含んだ油揚げとご飯に、なんとも食欲がそそられる一品です。

ネーミングの由来は県を代表するあの山から!?

米子地方の油揚げは大きな三角形をしているそうです。「いただき」というネーミングの由来も、鳥取県が誇る大山(だいせん)の頂上に似ていたからだとか。ほかには家族みんなで「いただきまーす!」と言って食べるからなどと言われているようです。
 
油揚げからはたんぱく質やカルシウム・リンなどのミネラルが、中に詰める野菜からはビタミンなどの栄養素も取れます。濃いめに味付けて作り置きもできますし、お弁当にしてもGOODですよ!

感嘆! 郷土料理の本領発揮「いただき」

「いただき」の作り方
【 材料 】4人分
・お米 … 1.5合
・油揚げ … 5枚
・ごぼう … 30g
・にんじん … 30g
・干ししいたけ … 小3個(3g)
・昆布 … 2g
・水 … 4カップ
・砂糖 … 大さじ2杯
・しょうゆ … 大さじ3.5杯
・酒 … 大さじ1杯
・みりん … 大さじ1杯

【 作り方 】
(1)油揚げに熱湯をかけて油抜きをし、切れ目を入れて袋状にします。
(2)干ししいたけを水に漬けてもどし、細かく切ります。
(3)ごぼうはささがきにして水にさらします。
(4)人参を細切りにします。
(5)ボウルにお米と(2)(3)(4)を入れて混ぜ合わせます。

(6)油揚げの中に(5)を詰めて、つまようじで口をとめます。

(7)油揚げ全体につまようじで穴を開けて、味がしみ込みやすくします。
(8)お鍋に昆布を敷き、その上に(7)を並べて、水と調味料を加えます。
(9)落しぶたをして強火にかけ、沸騰したら20分程度炊きます。

(10)煮汁がなくなるまで炊くのが出来上がりの目安です。つまようじを外して器に盛って、完成です!

\ 作り方のポイント /
油揚げを袋状に開く作業……難しいですよね。油揚げの上で菜箸を転がして摩擦をかけることで開きやすくする、購入の際はふっくら薄くて軽い油揚げを選ぶなど試すとよいようです。
 
さて出来上がった「いただき」は、まだら模様となっていました。だし汁が全体にいき渡らなかったことが反省点です。でもふっくら炊き上がって、見るからにおいしそう。崩れないようにそっとお皿に盛り付けます。早速ほおばると、しょうゆの照りと砂糖の甘みで口の中が満たされます。干ししいたけをはじめ、それぞれの食材から溶け出したうま味がご飯のひと粒ひと粒にじんわりとしみ込み、深みのある味わいに。さらにまるでもち米のようなむっちり感までも感じました。
 
これはいなり寿司とは全く異なる食べ物です。
炊き込みご飯のようであり、もち巾着のようでもあり……。そして「いただき」は冷めてからもその本領を発揮してくれました。
冷蔵庫でひと晩寝かせたら、うまみがギュッと閉じ込められてより芳醇な味わいになっていたのです。朝食で「いただき」を食べた家族は「おいしい!」と満足し、準備する私は作り置きを出すだけなので手間いらず♪
郷土料理の魅力は、まさにこの奥深さなのかもしれませんね。

この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。

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