「白米」「分づき米」「玄米」の違いとは
弊社 小池精米店には色々なお客さまがお越しになります。
その中に「玄米、置いてありますか?」とお尋ねされるお客さまもいらっしゃいます。
弊社は「精米」店ですから「玄米を精米する」ことが普段の業務の一つです。ただ弊社は常時80種類くらいのお米を置いてあるため、単に「玄米」では分かりません。そこで「どの品種になさいますか?」とお尋ねしますが、時々このような返答があります。
「玄米って、品種があるんですか?」
最近、玄米や胚芽米に関心を持つ人が増えてきているとはいえ、まだまだ白米に比べて市民権を得ていないことが、この事例よりうかがえます。
例えば「コシヒカリ」。収穫後、籾(もみ)から玄米に加工されて、産地から米屋に運ばれてきます。米屋は「コシヒカリ」の玄米を精米し、白米にしてお客さまに販売しているのです。つまり品種の数だけ玄米も白米もあるのです。
玄米は「完全食」と呼ばれるほど栄養が豊富です。
上のグラフは文部科学省が出している「食品標準成分表」から作成したものです。玄米と白米とではエネルギーや炭水化物ではあまり差はありませんが、玄米にはビタミン・ミネラル・食物繊維が非常に豊富であることが分かります。
ただ気をつけなければいけないのが次の2点です。
(1)「玄米は消化に悪いので胃や腸が弱い人は避けるべき」
玄米は消化が悪い食べ物です。よく噛んで食べなければ胃腸に負担が生じます。私の知り合いの方で、玄米を食べ過ぎて腸閉塞になった方もいらっしゃいました。
(2)「玄米には時々異物(石や米以外の植物など)が含まれているので、信用できる専門店や農家から購入すべき」
玄米に異物が含まれるのは「普通」です。それは精米段階で異物を除去することが昔からの慣習になっているからです。「わざわざ異物を取り除いて商品に仕立てている」玄米を探す必要があるのです。
玄米と白米の中間……それがグラフにもある「5分づき米」です。
「玄米」の茶色い部分が「糠(ぬか)」です。この「糠」は米粒全体の1割(=10分)を占めています。つまり「白米=玄米×0.9」となるのです。
「分づき米」とは「10分」まで精米せずに「途中で精米するのをやめたお米」のことです。
どこまで削ったかにより7分づき・5分づき・3分づきと分かれます。以下、それぞれの違いをまとめてみました。
■1分づき(ほぼ玄米)
玄米の表面はテカテカと光っていますが、これは「ロウ層」です。水を通しません。そこだけを削ったのが「1分づき」。水をよく吸い込むので玄米よりも炊飯時間が短くて済みます。
■3分づき
玄米の栄養価を求めつつ、あまり硬くない方がいい、という人向き。
■5分づき
「私は玄米が食べたいけれど家族が嫌がるので……」というご家庭向け。このパターン、最近本当に多いです。
■6分づき
「『ザ・玄米』は避けたいけど、胚芽はしっかりと残して欲しい」という人向け。保育園や子ども園での採用が増えています。
■7分づき
いわゆる「胚芽米」に近いお米。「白米ラバーズ」の中で「玄米に興味はあるけどいきなりはちょっと……」といった人向け。
■8分づき(ほぼ白米)
もう少し白米を硬めに仕上げたい、という人向け。寿司屋での採用が多いお米です。
このように、お米を精米するだけでここまで多様な味わい方があるのです。
そして……玄米のなかでは「発芽玄米」もあります。この発芽玄米は精米ではなく、水を加えることにより発芽させて食べる玄米のことです。玄米は「種子」でもあります。その種子をあえて発芽させることにより、普通の玄米に比べると、栄養素はほぼそのままで、そのうえで、
①柔らかくて食べやすい
②GABAが増大する
のメリットが生じるのです。
お米の品種による味の違いを「横展開」とすると、このように同じ品種でも加工による味の違い……「縦展開」も出来るのです。その奥深さが「お米」なのです。
この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)