夏越(なごし)ごはんって、どんな食べ物?
「夏越ごはん」という言葉。
初めて聞いた方は多いのではないでしょうか。
夏越ごはんとは、雑穀ごはんの上に緑や赤の旬の野菜のかき揚げをのせ、おろしだれをかけた丼のことです。
2015年より新しい記念日として加えられた「夏越ごはんの日」に食べられています。今回はその夏越ごはんの由来や、魅力についてご紹介します。
毎年6月30日は「夏越ごはんの日」
夏越ごはんの日は、古来より全国の神社で行なわれてきた「夏越の祓(はらえ)」の神事に合わせて提唱されるようになりました。
夏越の祓とは、一年の前半の最終日にあたる6月30日に行われる大祓(おおはらえ)の神事のことです。
12月の大晦日に行われる大祓「年越の祓(としこしのはらえ)」とともに、日々の暮らしの中で知らず知らずのうちに犯したであろう罪や過ち、心身の穢れ(けがれ)を祓い清め、無病息災を祈るもの。
一年の前半の穢れを祓い、残り半年間の無病息災を願って各地の神社で執り行われています。
夏越の祓に行われる神事
毎年、夏越の祓では様々な神事が行われています。
夏越の祓の代表的な神事として知られているのが「茅の輪(ちのわ)くぐり」。
茅の輪くぐりとは、参道の鳥居などの結界内に、茅(ちがや)という草で直径数メートルの輪を作り、それをくぐることで災厄を祓い清めるというものです。
夏越ごはんに乗せるかき揚げは、この茅の輪がイメージされています。
茅の輪くぐりは、日本神話のスサノオノミコトに由来すると言われており、「水無月の夏越の祓する人は、千歳の命延ぶというなり」と唱えながら、8の字に3度くぐり抜けるのがしきたりとされています。
ほかにも、人の形をした紙に名前などを書き、自身の調子の悪い箇所を撫でて災厄を人形に移し、自分の身代わりとして神社に奉納して厄払いする「人形代(ひとかたしろ)」という神事もあります。
基本形からバリエーションまで、自由に楽しめる「夏越ごはん」の魅力
夏越ごはんは、分かりやすく言うと「かき揚げ丼」。
ごはんは、蘇民将来(そみんしょうらい)が素盞嗚尊(すさのおのみこと)を「粟飯」でもてなしたという伝承にならった粟、邪気を祓う豆などが入った雑穀、小豆などが入っている雑穀米がベース。
そこに、邪気を祓うといわれる赤や緑の旬の夏野菜を使った丸いかき揚げをのせ、百邪を防ぐといわれる旬のショウガを効かせたおろしだれをかけたものが基本形です。
ですが堅苦しく考える必要はなく、ごはんも普通の白飯でも大丈夫ですし、「茅の輪にちなんだ丸い食材」という要素をおさえれば、夏野菜カレー、ビビンバなど、夏越ごはんのバリエーションは自由自在。お好みの味で楽しめることが「夏越ごはん」の魅力です。
料理レシピのサイトなどでも、アレンジされた夏越ごはんの作り方が多数紹介されていますよ。
「夏越の祓」にいただくお菓子
ほかにも、夏越の祓にまつわる食べ物といえば、夏越しの祓の日に食べる「水無月」という京都の伝統的な和菓子があります。
ういろうの上に邪気を祓うあずきがのった三角形のお菓子で、三角形は削りたての氷を表しています。冷房も冷蔵庫もない時代、蒸し暑くなる7月は体力を消耗するので、甘く食べやすいお菓子でエネルギーを補給し、厄祓いをしていたようです。
1000年以上も前から続けられてきた「夏越の祓」。昔から受け継がれてきたものを敬い、大切に思う気持ちは忘れずにいたいですね。
夏越のごはんの日は、国民の主食「米」を安定的に消費者に届ける取り組みを行っている指定法人米穀安定供給確保支援機構により提唱されました。日本人の食生活の欧米化が進む現代、日本の文化とお米を見つめ直す機会として提案されています。
ぜひ今年は、ご家族の無病息災を祈って「夏越ごはん」を楽しんでみてくださいね。
この記事を書いてくれた人:さとう きょうこ
専業主婦から毎日新聞社のライターを経て住宅会社に就職。広報、人事部を立ち上げ、『家を売るライター』として有名建築家や経営者、顧客を取材。雑誌書籍の編集や採用人事も担当。16年の勤務を経て2020年に独立。