お米屋さんが教える、お勧めのお米保管方法
「お米はいつまで食べられるのですか?」
米屋がよく受ける質問です。
そもそもお米は野菜と同じく生鮮食品であるため、袋詰めされてはいますが「加工品」ではありません。生鮮食品なので、当然「賞味期限」や「消費期限」の記載はありません。記載があるのは「精米時期」のみです。
つまり「食べられるかどうか」は消費者が購入した際の見た目や調理段階での香り等で判断することになるのです。
しかし一方でお米は乾物です。ぱっと見で古いかどうか、分かりにくい食品です。それ以前に最近のお米のパッケージは中身が見えないものが多くあります。そうなると「精米時期」の記載はお米の鮮度を推し量るうえで非常に重要な情報になるのです。
お米はいつまで“美味しく”食べられるのか
「お米はいつまで“美味しく”食べられるのですか?」
これも米屋がよく受ける質問です。そしてこの質問に対する解答で引用するのが「精米時期」なのです。
しかし「精米してからどれくらい経過したら不味くなるのか」についての明確なエビデンスは、実はありません。
精米時期から数えて、春は1か月程度、湿気の多い梅雨や夏は3週間程度、冬では2か月程度で食べきるのが理想、と言われていますが、あくまでも慣習的なものです。「1か月」と言いつつ、32日目から各段に不味くなるわけでもありません。
ただいずれにしても精米してから味が落ちていくのは確かです。上記の期間は常温保温が前提ですが、その期間中だけでもより美味しく食べるには、保管方法を見直してみると良いでしょう。
味に格段の差が出る保管方法とは
お米は乾物ですので、どうしても保管についてはおざなりになりますが、しかし野菜や果物と同じように保管に気を遣うことで格段に味に差が出ます。具体的なポイントをご紹介しましょう。
(1)空気を遮断すること
精米したら酸化が始まりますが、その酸化を防ぐためです。またお米は呼吸をしています。呼吸すると養分が減りますのでその呼吸を止める意味もあります。
(2) 気温が低く暗い場所に置くこと
この目的も呼吸を止めることにあります。いわばお米を安眠状態にするのです。ちなみに産地や流通段階では、春以降は玄米を摂氏15度以下・湿度70~80%で保管し、劣化を防いでいます。
そして……(1)・(2)の条件を満たす方法が「ペットボトルやジッパー式ビニール袋に入れて冷蔵庫に入れること」なのです。
なお、買ってきた米袋のまま冷蔵庫に入れてはいけません。米袋には空気穴が開いているため、冷蔵庫の乾燥した空気が米粒に当たり、乾燥して割れてしまうからです。
購入単位にも気を付けましょう。5㎏では小分けに手間がかかるので、1回に購入する量を減らします。そうすれば購入頻度が上がり常に新鮮なお米をストックできますので一石二鳥です。
無理のないよう、自分なりに美味しく食べてもらいたい。それが米屋の願いです。
最後に……
「古くなったお米はどのようにすれば美味しく食べられますか」という質問もよく受けます。例えば油を入れる、お酢を入れる、備長炭に入れる……。様々な方法があります。
しかし、誤解を恐れずに言えば、これらは「ごまかしの手法」でしかありません。
米屋として大事にしたいのは「いかにお米本来のポテンシャルを引き出して、美味しく食べることが出来るか」です。そのための方法論であれば、いくらでも喜んで説明いたします。
私たちが皆さんに伝えたいのは「古米の食べ方」ではないのです。
例えば野菜。古くなったらそれなりの調理をすると思います。
お米も同じです。古米で、それこそ香りも食感も気になるようでしたら、カレーやチャーハンなどにして食べればいいのです。
食べるのに難儀するほど古米になってしまったら……無理して白米で食べないでください。それなりの調理法で、無駄にせず、楽しんでください。そして以後、そうならないように気を付けてください。
それが僕ら米屋の願いなのです。
この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)