ごはんがガッツリすすむ!富山県の郷土料理「ブリ大根」
冬の雷鳴とともに日本海の荒波を乗り越えて、
今年もあいつらがやってくる!
その正体は、富山県民に古くから親しまれているブリです。何でも「ブリ起こし」や「嫁ブリ」なんてユニークな言葉もあるのだとか……。
富山県では多くのブリ料理が脈々と受け継がれており、中でもブリ大根は農林水産省の「郷土料理料理百選」に選ばれています。
今回は、寒い冬にごはんと一緒に食べたいブリ大根をご紹介します。
雷鳴と共に王者がやってくる!冬が旬のぶり
富山湾は500種もの魚が生息しているといわれている、漁業が盛んな地域です。中でも県民が誇るのは、「冬の味覚の王者」と呼ばれているブリです。初冬に鳴る雷は、「ブリ起こし」と呼ばれる豊漁を告げるサイン。北海道から南下して富山湾までたどり着いたブリは、身が引き締まっていて脂ののりが最高! ブリは養殖も盛んなため1年中食べることができますが、冬に水揚げされる天然のブリは脂ののりと味が格段に異なるのです。
ブリは捨てるところのない魚で、身を使った刺身・ブリ大根はもちろん、カマの塩焼き、内臓を使った煮なますなど、全身余すことなく食べられます。富山県ではブリを焼き魚、刺身として食べるのが主流でしたが、最近ではブリしゃぶとしても楽しまれ、県民だけではなく日本全国にファンを増やし続けています。
栄養が豊富で縁起もいい? ブリの魅力
ブリ大根とは、ブリと同じく冬に旬を迎える大根を、醤油、砂糖やだし汁で甘辛く煮る富山県の郷土料理です。
うま味がギュッと詰まった芳醇な味わいが魅力です。ブリにはEPA、DHAやビタミンDなど多くの栄養素が含まれていることでも知られています。EPAには血液の流れをよくする働きが、DHAは脳を活性化するのに役立つといわれています。ビタミンDには筋力を高めたり丈夫な骨を作る働きがあるので、栄養価が高い食材といえそうですね。
また富山県では、ブリは成長に伴って何度も名前を変えることから「出世魚」とも呼ばれています。
「ツバイソ」→「フクラギ」→「ガンド」→「ブリ」のように、ブリになるまでに呼び名が何度も変わるのです。そのため富山県の一部の地域ではブリにあやかって、娘の健康と娘婿の出世を祈願して嫁ぎ先にブリを1本贈る「嫁ブリ」という風習が今でも残っているのだとか。
ご飯が止まらない! 濃厚なブリ大根
ブリ大根は、冬に旬を迎えるブリと大根を甘辛く煮た料理。
一部の地域では味噌で煮込むこともあるようですが、今回はスタンダードに醤油味で作りたいと思います。
【 材料 】2人分
・ブリの切り身(小) 8切れ
・大根 1/4本
・しょうが 1片
・ゆず あれば少し
・水 1カップ
・酒 50ml
・しょうゆ 大さじ1.5杯
・砂糖 大さじ0.5杯
・みりん 大さじ1杯
【 作り方 】
(1)大根は皮を剥いて、厚さ1センチ程度の輪切りにする。
(2)鍋に大根がかくれるくらいの水を注いで、20分煮る。
(3)ブリは塩をふって20分おいた後、出てきた水分をキッチンペーパーでしっかりとる
(4)ブリに熱湯をかけて湯通しする
(5)鍋に水と調味料を入れて、煮立ってから大根を入れて15分煮る。
(6)ブリとしょうがを加えて、落とし蓋をしてからさらに15分煮る。
(7)器に持ってゆずの皮を飾って完成!
\ 作り方のポイント /
ブリを煮る前にきちんと下処理をすることです。
塩をふってをさっと湯通しすると、独特のクセや生臭さが消えておいしく仕上がります。少し面倒に思っても、このひと手間をするだけでいつもとは異なる味わいに!
あつあつのブリ大根を口に運ぶと、思わずもれたのはおいしい! という言葉。ホロホロに煮込まれたブリの身が香ばしく、魚臭さなどはありません。ブリのうま味をたっぷり含んだ大根は、とてもやわらかくお箸ですーっと切れるほどにジューシー。こっくり濃いめの甘辛味にほのかに香るゆずが、さわやかさを添えてくれます。
寒い冬の日に、湯気の立ち上るブリ大根とご飯をフーフーしながらほおばる。日本人に生まれて良かったと思う瞬間ではないでしょうか。
まとめ
旬のブリは特に脂がのるため、冬に作るブリ大根はこってりとした味わいになります。そのためだし汁を使わなくても、そのうま味だけでコクのある、ご飯がガッツリ進むおかずとなるのですね。冷めてもおいしいので、たくさん作ってお弁当のおかずに回しても◎。
下処理さえ丁寧に行えば、あとはいつもの調味料で煮るだけ。
この冬は、アツアツのブリ大根とご飯をぜひ食卓に!
この記事を書いてくれた人:井上リエ
プロフィール:東京都在住。図書館司書を経て、ライター活動中。食べること料理すること、玄米とワインを愛する食いしん坊。
趣味はヨガ、旅行、ハーブの栽培で、健康と美容への探求心も旺盛。