「おばあちゃんのおにぎり」は、なぜおいしい?
食べ物の味は
甘味、塩味、酸味、苦味、うま味
この5つの基本味で構成されています。
この「五味」のバランスが良ければ「おいしい」と感じるのです。
口の中で食べ物を咀嚼し、唾液と混ざることで食品の成分が溶け出し、これらの味物質が舌にある「味蕾(みらい)」で感知されると味を感じます。
おにぎり4大要素
おにぎりを構成する基本要素は、コメ、具材、海苔、そして塩の4つです。
コメは炭水化物が大半。
言うなれば、「甘味」と「うま味」のカタマリです。
具材は、その食材により、5つの基本味の組み合わせで構成されます。
海苔は、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸という3つのうま味成分のカタマリです。
塩は産地や製法によって甘味や苦味、うま味を感じるものもありますが、基本は塩味です。
これら基本要素4つのうち、おにぎりにとって絶対に欠かすことができないのがコメと塩。
“おいしいおにぎり”を構成する基本要素は、「甘味」「うま味」と「塩味」の3つであり、その3つのバランスが重要と言えます。
「甘味」「うま味」と「塩味」のあま―い関係
よく「スイカに塩をかけると甘くなる」と言われています。
実はこれ、甘味と塩味の相性によるものなのです。
ほどよい塩味は、甘味を引き立てる効果があります。
和菓子を思い浮かべてみてください。
おはぎ、大福、みたらしだんご。
甘さを引き立てるため、ほとんどの甘味には塩が使われています。これは裏を返すと「塩を使うと甘味は少なくて済む」という意味もあります。
塩ももちろんですが、昔は砂糖が非常に貴重なものでした。
必要最小限の砂糖とほどよい塩で甘味を最大限に引き出すという、日本古来の知恵です。
実は「うま味」も「塩味」も相性が良く、うま味は「塩かど」を取り、塩は「うま味」を感じしやすくする力を持っています。
その関係を利用し、塩の量を減らしてもうまさが変わらない料理を作ることが可能となるのです。
このように「甘味」「うま味」と「塩味」は密接な関係にあります。
工場でつくられるおにぎりは「塩水」で炊いている!?
あまり知られていませんが、現在食品工場で生産されているおにぎりの大半が、「塩水」で炊飯された炊飯米(塩飯)を使用しています。
この塩水炊きは、塩分が均一に広がり、味や栄養価の統一が図れるメリットがあり、ほぼ全てのおにぎり製造工場で採用されてきました。
一方、手づくりのおにぎり、特に“昔ながらのおばあちゃんのおにぎり“は、
手に塩をつけてからにぎることがほとんどです。
まさにここに「おいしさの壁」があります。
塩水炊きのご飯は、良くも悪くも均一な味です。
一方、手塩の場合、塩がごはんにまだらにつくので、均一ではありません。
実はこの“塩味の感じ方”“味の凹凸”こそが、おいしさを感じる差となり、
おばあちゃんのおにぎりがおいしい、と感じる所以なのです。
「振り塩」の研究を進めるコンビニ各社
この味覚の差に気がついたコンビニ各社は、近年「振り塩」の研究を進めています。
通常の炊飯か薄い塩水炊きの違いはありますが、おにぎり成形後、最終工程で塩を振りかける工夫をしています。
特に「塩にぎり」のパッケージに「振り塩」とうたう商品も目にします。
しかし製造工程上、ある程度均一な形で塩を振りかけることには変わりありません。
“おばあちゃんのおにぎり”にどこまで近づけるのか。
コンビニおにぎりの更なる進化に、引き続き注目しましょう。
この記事を書いてくれた人:江戸川渓谷(えどがわけいこく)
プロフィール:三度の飯とおにぎりが好き。趣味は道の駅めぐりに商店街散策、メタボ対策のトレッキング。うまいものは足で稼ぐのが信条。ゲットした惣菜で晩酌するのが最近の楽しみ。