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コロナに負けず。駅弁は続くよ、どこまでも。「駅弁通販事情」

駅弁は駅で買うもの。

新型コロナウイルス禍の影響で、そんな当たり前が当たり前でなくなってしまいました。
鉄道旅がしにくくなり、人が集まる催事開催も制限が多いなか、当然のことながら、駅弁事業者の経営にも深刻な影響を及ぼしています。
駅弁が残るためにすべきことは何か。

各社が活路を見出しているのが、駅弁の「通販事業」です。

駅弁通販の先駆者

コロナ前から「駅弁通販」に積極参入していたのは、奇しくも「かに」で名を馳せる2社。
1896年創業の北陸最古の老舗、「かにすし」で有名な石川県・加賀温泉駅「高野商店」と、1943年創業の「かにめし」で有名な北海道・長万部駅「かにめし本舗かなや」です。

「高野商店」はもともと酢飯を得意とし、日持ちしやすい寿司系弁当を中心に通販を強化。
最近では貴重な香箱蟹(ズワイガニのメス)をつかった冷凍の和風ドリアが評判です。

出典:高野商店

一方の「かなや」は、戦後間もない頃に大型冷凍機を導入。
地元・噴火湾で獲れる毛蟹を瞬間冷凍してご飯に敷き詰めた「かにめし」は、またたく間に超ロングセラー商品へと成長。
冷凍版「かにめし」は冷凍駅弁の先駆け的存在として、今も広く親しまれています。

出典:かにめし本舗かなや

ほかにも、いくつかの駅弁事業者は、近隣への宅配や、届いた当日消費用に冷蔵便で送るなどの取り組みをしていました。

しかし、駅弁は旅先で食すことに意味があり、大きな価値であるという考えから、通販を主戦場と捉える事業者はこれまで皆無でした。
しかし、コロナという未曾有の事態に新たな取り組みをしないわけにはいきません。

コロナに負けない! 駅弁業界の挑戦

真っ先に動いたのは、横浜駅の「崎陽軒」。
「弁当」と「シウマイ」で売上高の8割以上を占めていましたが、コロナで半減。

一方で「コロナで買いたくても買えない」という多くの崎陽軒ファンの声に応えるため、コロナ第1波が収まった直後、2020年8月には冷凍駅弁「おうち駅弁シリーズ」を発売。
特に「おうち駅弁シリーズ チャーハン弁当」は、通常弁当でも根強い人気があり、これまでの通販売り上げが倍以上になりました。

神戸の「淡路屋」は、自然解凍に対応した「どこでも駅弁」を2021年5月に発売。人気の「ひっぱりだこ飯」や「すき焼き弁当」を冷凍用に改良して提供されています。

姫路の「まねき食品」は、2020年12月に「あなごめし」など人気駅弁3種を冷凍商品化。さらに2021年5月には、グルメ冷凍弁当「全国旅気分」と冠し、北海道、東北、北陸、近畿、瀬戸内、九州の6地域の味を冷凍シリーズ化しました。

もちろん「地元の味を地元の駅で食す」のが、駅弁の醍醐味です。
しかし、誰もが気軽に鉄道旅をしにくくなっているのも事実。

世界にも「EKIBEN」として認められている日本の文化を守るため、従来の枠組みを超えた各社の取り組みを、しっかり応援したいと思います。

この記事を書いてくれた人:江戸川渓谷(えどがわけいこく)
プロフィール:三度の飯とおにぎりが好き。趣味は道の駅めぐりに商店街散策、メタボ対策のトレッキング。うまいものは足で稼ぐのが信条。ゲットした惣菜で晩酌するのが最近の楽しみ。


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