[炊き比べ]電気炊飯器・土鍋・圧力鍋で「玄米」を炊いた場合の「違い」とは
玄米の糠層には食物繊維や、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。昔は今ほど精白しきったお米ではなかったため、おかずが少なくともお米さえ食べていれば極端に不健康になることはありませんでした。
江戸時代に精米技術が発達すると、江戸を中心に白米を食べる習慣が広まっていきました。しかしそれにより極端なビタミン不足になり、脚気が流行したのです。これを「江戸患い」と言いました。
「脚気がなぜ起こるのか」が解明されたのはずっと時代が下がってからです。明治43年に農学者・鈴木梅太郎が米糠から脚気予防の有効成分ビタミンB1を抽出することに成功し、その出来事がきっかけで解明されたのです。
私たちの祖先は玄米を摂取することで図らずとも健康的に過ごすことができたのです。
しかし今ではそういった栄養素をおかずで十分に賄うことができるため、玄米を食べる必要性は薄れています。
しかし最近では「玄米の食感が好き」という嗜好や「お米に含まれている糠層をわざわざ捨てるのはもったいない」という観点から、玄米食が再び広がっています。
日本人は江戸時代以降、根強い「白米信仰」を抱いてます。
一般的に「お米の美味しさ」とは「白米の美味しさ」を指します。
日本中で開催されるお米コンクールは、白米の美味しさのみを競います。
以前、生産者さんと話したとき「玄米なんて、なぜ食べるんだ」と不思議がっていました。
生産者レベルでも「白米にして美味しいお米」の栽培に注力しており、玄米そのものの味には関心がありません。そう考えると「玄米を美味しく」という論点は、実は古くて新しい話とも言えるのです。
お米を炊飯する道具として、代表的なものには
電気炊飯器
土鍋
圧力鍋
この3つがあります。
これらを用いた玄米炊飯における違いを見ていきましょう。
電気炊飯器
まず電気炊飯器です。
普通モードで炊飯しても、玄米は美味しく炊けません。それは炊飯時間が短いため、玄米の中に水が十分に浸透しないからです。その原因は、玄米の外側の「ロウ層」です。水が米粒の中に浸透しなければ、でんぷんは柔らかくなりません。
最近の電気炊飯器には「玄米モード」がありますので、ぜひこの機能を使ってみてください。時間はややかかりますが、それでも普通モードよりは美味しく炊けます。
ただそれでも土鍋や圧力鍋に比べると、ややパサパサ感が残ります。その背景の一つが「火力」です。コンロだと3,000~4,000キロカロリーありますが、家庭用コンセントだと1,500ワット(約1,300キロカロリー)が最大です。もちろん炊飯器内でどの程度の熱量になるかは別の話ですが、その差は歴然です。
土鍋・圧力鍋
いっぽうで、土鍋や圧力釜だと電気炊飯器とは比べ物にならないくらい時間がかかります。それは6時間以上、私の経験則では一晩、水にしっかり浸けることが求められるからです。
電気炊飯器はお米を洗って釜に入れてスイッチを押すだけで炊飯が始まりますが、ここには浸漬時間も含まれています。ただ、玄米モードであっても電気炊飯器は利便性・時短性が求められている調理器具ですから、2時間程度がせいぜいです。
時間はかかりますが、しっかり水に漬けて炊飯した玄米は、皮も柔らかく、中のでんぷんももっちりと柔らかくなります。「時間をかけた甲斐がある!」と実感することでしょう。
圧力鍋は土鍋よりも更にもっちりと、また短時間で仕上がります。
圧力鍋は「大気圧以上の圧力を加えて、閉じ込めた液体の沸点を高めることで、食材を通常より高い温度と圧力にさらして短時間で調理することができる調理器具」だからです。
ただ、いくらもっちりに仕上がっても玄米の食物繊維はほとんどが不溶性のため、よく咀嚼することが大事です。私の知り合いの人には、玄米食により腸閉塞になった人もいます。
玄米食は無理せず、自分の体調やライフスタイルにあった食べ方で楽しむことが大事ですね。
この記事を書いてくれた人:小池理雄(小池精米店三代目)
1971年原宿生まれ。明治大学卒業後、会社勤務を経て2006年に小池精米店を継ぐ。五ツ星お米マイスター。テレビやラジオ、新聞、雑誌、ネット等のメディア出演多数。
共著「お米の世界へようこそ!」(経法ビジネス出版)